第九話 ベルとモモ
「しばらく、そうだな１・２時間くらいは寝てて貰おう」
せっせと薬草を刈ってるモモとベルの前にアナが現れる。腰に手をあてて、ふんぞり返っている。
「そんな暇あったらとっとと草刈るのかしら。」
見もせず、ベルがたしなめる。
「お前、ベルなのか？めっちゃ痩せたな。変なクスリでも飲んだのか？それとも、いっぱいアンブロシアだしたのか？」
アナはまじまじとベルを見つめる。
「アンブロシアの話は、しないで欲しい。負けたくなければ、手を動かしましょう」
モモは、こめかみに青筋を浮かべながら、せっせと草をちぎってる。細かい作業は苦手らしい。
「私も始めはそうおもった。けど、あの豚牛男、残念な事に腹がつかえて、足下の草さえ採れないのだよ…」
アナの後ろから、牛男が走ってくる。汗だくだ。
「というわけだ、悪いがいくぞ！」
アナは、モモに殴りかかる。アナから金色の光が溢れている。戦神降臨。間違いなくその身に異界の神を宿している。
モモは、不毛な異界の一月のお陰で、とても気がたっていた。
「タイタン・ハンズ」
ゴツ！ゴツッ！
巨大な二つの手が、アナを殴りつけ、鈍い音が響き渡る。
アナはふっとばされるが、こともなげに、着地する。
アナにモモが走り寄り、巨人の手でアナを掴む。速くてアナは全く反応出来ない。
「ベル。何かして」
アナが大声をだす。
「了解！恨まないのかしら！グラトニー！！」
ベルの手から金色の光が放たれる。それが当たる寸前、モモは巨人の手を離す。アナに光がすいこまれる。
「ウオオオオオーッ！」
アナが叫び声を上げる。
「分子分解ディスインテグレイト！ダブル！」
ベルの手から二筋の白い光線が放たれる。それらはアナの足下、牛男の足下を貫き、大きな穴を空ける。二人とも、穴に吸い込まれる。
「ゴミは埋めるのかしら！」
ベルがモモに言う。
「了解！タイタン・ハンズ」
駆け出したモモは大地を殴りまくり、一瞬のうちに平地にしてしまう。
そして二人は草を求め歩き始めた。
チュドーーーン！！
「何かしら？」
ベルが呟く、そして二人は踵を返す。
大地が抉れクレーターが出来てる。その中央には金色の鎧を身に纏ったアナが仁王立ちしている。
「ベル、美味しい魔法をありがとう！お陰様で、めでたく１００％解放いただきました！さあ、お嬢さん方一緒に踊ろうか！」
アナは満面の笑みを浮かべる。
「暴走してる。危険だわ！ベル魔法を！！」
モモはベルを見る。
「すっからかんかしら、そうね、ベルのＭＰタンクのマリーの所に行くのかしら」
「了解」
モモは、ベルを担いで逃げ出した。
集中して気配を探りながらモモは走る。
「目標発見！」
モモはマリーを見つけた。
ためらいなく全力で、ベルを投げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
二人の言う事をまとめると、こんな感じらしい。モモさんはぼそぼそだし、ベルはかしらかしらうるさいし、理解には結構な時間を要した。
とりあえず、作戦会議の前に腹ごしらえといきますか。
収納のなかから、1畳ほどのマットを出して床にしき、経時劣化しないボックス弁当用をだす。その中からサンドウィッチと冷えたお茶をだして、その上に広げる。あと、暖かいおしぼりを人数分だす。これらは、実家を出る前に仕込んでいたものだ。僕はこういう所はとことんこだわる。みんなで靴を脱いで、サンドウィッチを囲む。
「何かしらこれ！サンドウィッチかしら、昔お城で食べたことがある！」
ベルがはしゃいでいる。後の二人は始めてみたいだ。パニーニみたいなのは見かけるが、パンのみみを落としたサンドウィッチは見かけたことがない。コストの問題だろうけど。
『いただきます！』
みんなで唱和する。具材は、たまご、ゆで卵を荒く潰してマヨネーズで和えたもの。レタス・ハム・チーズ。それと自家製ローストビーフ。
「美味しい！柔らかい！」
モモさんは満面の笑顔だ。よほどアンブロシアライフがこたえたのだろう。
「みみを落としたパンのサンドウィッチってなんて贅沢なのかしら！貴族！貴族みたい！」
いつもは、テンション低いベルがマックスだ。太らせないようほどほどにしよう。
「おいしい！しあわせ！」
サリーは、なんか口数が少ない、心なしか顔が赤いような？
僕達は、照らされた鍾乳石の幻想的な景色のなか、ブランチを楽しんだ。そのあとはコーヒータイム。
ん、なんか忘れてるような…
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