第四話 聖女帰宅する
ベルと僕はベルハウスを出る。太った牛男ものろのろついてくる。
ベルは家のドアノブをむしり取る、すると家は縮み、後には普通の細い一本の木が残った。
「それ、木を太らせる呪いのアイテムか?」
「うるさいわねー!お前も太りたいのかしら?」
「おいおい、お前MPすっからかんだろ?魔法何一つ使えないんだろ!魔法が使えないお前は、ただの子豚だ!!」
僕はベルの頭をぽむぽむする。
「ほう!」
ベルは僕の手をぎゅっと握り僕の目を見る。
「お前は、お風呂に入ることも、トイレに行くことも、寝ることも無いのかしら?」
「何のことだ?」
「入浴中、トイレ中、就寝中、いついかなるときも、ベルはお前を狙うわ!太った巨乳は巨乳と見なされない、ただのでぶかしら!お前は唯一の長所を無くする事になる!!」
何て恐ろしい奴だ!実際やりかねん…
「すまん、僕が悪かった、仲直りしよう」
僕は、きゅっと手を握り返す。
「いいわよ」
ベルは空間にドアノブを消す。収納魔法使えるんだ。
「ところで、あの穴どうするんだ?」
僕はベルが開けた穴を指差す。丸く深く抉れてて、底には、白いキラキラした粉が溜まってる。
「ベルの魔法は物質を塩に変えるのよ。凄いでしょ」
やっぱこいつはやばい危険すぎる!けど、味方としては、心強い。討伐とかには使いにくいかもしれないが。
「戻す魔法は知らないから埋めるしかないのかしら?」
「誰が?」
「お前たちよ」
「………」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕と牛男はやっと穴を埋めた。道具が無いので、近くの民家からスコップを借りたりとか、大変だった。牛男が太って役たたずなのが痛い。
「遅いじゃない。日が暮れちゃったじゃないのかしら」
ベルは僕と牛男の手を引き歩き出す。
「さっさとお前の家に行くのかしら」
何か最近、手繋いでばかりだなとか思いながらベルの小さい手を握り返す。そして、アパートへと向かった。
アパートに着き、まずはサリーの部屋へ行く。サリーはすぐに出てきた。
「マリーちゃん入って」
む、なんかサリーの顔が険しい。なんかしたかなぁ。僕?
中に入ると僕は正座させられる。
「マリーちゃん!聞いたわよ!町の中央広場で、モミって名前のエルフの美人ギルド受付嬢と下品な乱闘したんだって!」
やばい!いつもスローモーな話し口調なのに、きびきび喋ってる。かなり、怒ってるんじゃ?
「あなたの話で町は持ちっきりよ!ついた二つ名が、おっぱい美少女!カンチョー巨乳!下品なものばかりよ!パーティーメンバーに変な二つ名がつくと、あたしたちも迷惑よ!それに、あなたが変な名で呼ばれるのはあたしが許せないの!」
サリーは僕の目をじっと見つめる。
「誓って、もう二度と裸で町を飛び回ったり、エルフと下品な乱闘したりしないって!!」
サリーは僕の両手を自分の両手できゅっと包み込む。柔らかい!それにかわいい!僕は顔が紅潮するのを感じた。
「分かった二度としないと誓うよ」
僕は決して好きでそういう事してる訳ではない。
「お前!度し難い変態だったのかしら?それに百合なのかしら?」
ベルがじと目で僕を見ている。
「なにこれー!豚の獣人?オーク?」
サリーはベルに今気付いたみたいだ。それ程怒り心頭だったのか…
ベルはサリーの発言でショックを受けたようで固まってる。
「それに、牛男君?よねー?」
かくかくしかじか、僕とサリーはお互いの一日を擦り合わせる。
サリーたちは討伐の依頼を受けて、町の回りの魔獣害獣を狩りまくったそうだ。三人で特にアナは凄まじく狩りまくり、多分しばらく近隣では討伐依頼が発生しないだろうとの事だ。さすが忘れがちになるが金色の認識標の冒険者だな。金銭的にも少しは余裕になったそうだ。
「マリーちゃん。もう変な生き物を拾ってこないでねー」
サリーはゆっくりと優しいお母さんみたく僕を諭す。
「あのー、ベルはハイエルフなのですけど…」
ベルがなんかボソボソ言ってる。
「これで最後だからね、ペットを増やすのは!」
そう言うと、サリーは僕の肩をたたき、ベルを抱き上げる。
「よく見ると可愛いかもー!柔らかーい!マリーちゃんのおっぱいみたいー!」
ほう。ベルは僕のスライムと同じ属性なのか。こんど触れてみよう。
ピンポーン!!
「はーい」
チャイムが鳴り、サリーは玄関に駆けていく。
ん、いつ僕はベルを飼うって言ったかな?