第四話 聖女能力確認する
しばらく落ち込んだあと、ふと、我にかえる。そうだ、ここは迷宮の中。どうやって生還するか考えないと。『セイクリッド・マローダー』の三人にはいつか痛い目に合わせてやるにしても、ここから抜け出さないと。
まずは、今の自分に何が出来るか確認する。
「グラビティ・ゼロ!」
重力操作は出来る。けど、筋力が落ちているのか思った様には動けない。
「アクセル! マジック・ミサイル!」
魔法は発動しない。魔力自体が動いてないように感じる。
首にかけてるロザリオを外す。これは母さんから貰ったもので、僕の魔力をおさえるものだ。鍛え過ぎて強くなりすぎた魔力の暴走を防ぐものだ。これのせいで魔法が発動しないのかもしれない。
もう一度魔法を使うが何も起こらない。また、ロザリオをつける。
僕は念じて空間に黒い穴を空ける。『セイクリッド・マローダー』のメンバーには内緒にしてたが、僕は魔法の収納を持っている。
穴に手を入れて初級魔法の呪文書を取り出す。
収納の中には三日分位の食料と樽一つ分の水と調理器具と食器、テントと寝具、予備の剣と鎧、服を入れたトランク、あと母さんに困ったときに開けるように言われたトランクが入っている。
初級魔法の呪文書を出したのは、体質が変わった事で、今まで資質が無くて使えなかった魔法が使えるかもと思ったからだ。
いろいろな初級魔法を試してみて、二つの魔法が発動した。タッチヒールとホーリーライトだ。タッチヒールは触れたものを癒す魔法。ホーリーライトは、聖なる光を出す魔法だ。あと魔力感知も使えた。
しばらく呪文の練習をする。魔法は魔力というエネルギーを変質して奇跡を起こすものなので、慣れるまでは、その流れを作る呪文が必要だけど、慣れて自由にうごかせるようになれば無詠唱でもいける。延々と練習して感じを覚えて、二つとも無詠唱でいけるようになった。もともと無詠唱で幾つかの魔法を使えたので、発動のコツさえ掴めたらすぐ出来るようになる。けど、おかしい。僕自身はもともと魔法を使うと減るMPは高い方だけど、今はどれだけ使っても減った感触がない。
次は、母さんから貰ったトランクを開けてみる。中身は悪趣味な女物の下着と服だった……
ということは、変身については母さんは知っていた。ドラゴンを倒したことによる、呪いかなんかかと思ってたけど、そうじゃないって事だ。正直、訳が解らなくなる。
喉がかわいたので水を飲もうと思うが、困った事になる。この兜はバイザーを上げても目穴があるだけで留め具を外さないと口が出せない。もしかしたら、このままだったら兜が取れずに餓死もあり得る。早く誰かに助けてもらわないと。
「グラビティ・ゼロ」
ある程度触れてる物の重力も操作出来るので、鎧と兜も重力をカットして、僕は部屋を出た。