第十八話 死王
塩の山の中から現れたのは、漆黒のフルプレートメイルを纏った人物だ。背中には四対のコウモリの皮膜のような羽が生えている。
「光りの隣は闇の隣、闇の隣は光りの隣」
なんか訳の解らない事を言いながら、その人物が右手を上げて下ろす。数えられない程の光りの槍が現れ僕達に降り注ぐ。何本かが金カブの体を貫くが即座に癒す。
「お前は何者だ!」
多分死王だと思うけど、一応確認したい。
「我が名はエルエル。皆は私の事を死王と呼ぶ」
お、会話通じた。知能はありそうだ。エルエルって、デカそうな名前だな。
「話がしたい。攻撃を止めて欲しい」
「話す事など何もない。我が前に立つ者に訪れるのは等しく死のみ。これが摂理」
また光の槍を放つ。そんな気がしたが、頭の中バグってやがる。やっぱり交渉不能か……
「ぶっ倒す! 行くぞみんな」
僕は檄を飛ばし戦いののろしを上げた。
「分子分解!」
ベルが僕から魔力を吸って光を放つ。死王のそばで霧散する。防御結界か?
「貫け!フォボス、ダイモス」
アナの声がして、二条の光が死王に迫るがこれも霧散する。
「タイタン・ハンズ」
イカの籠からモモさんが飛び降りる。巨大な2つの手のひらで着地したと思った瞬間に死王に近づき素手で殴りかかるが、見えない壁に阻まれて、次の瞬間にはモモさんは吹っ飛ばされる。
そして幾条もの光の矢がモモさんに追い打ちをかけるが、なんとか巨人の手でそれらを防御する。
「ストーン、シャワー!」
サリーの魔法によって生じた巨大な円錐形の岩石が死王に降り注ぐが、これも見えない壁で逸らされる。
「燃えろ俺様! ノヴァフェニックス!」
王子が炎の鳥を放つ。それは身を削りながらもなんとか死王にたどり着く。だが、死王に蹴られて吹っ飛ばされる。
「ンーデル、ンーブル、ンーデイドー、開け地獄の門、アビススピリット!」
マッスルと化した学長の手からは、暗黒の球体が飛び出し死王に襲いかかる。死王にたどり着く前に弾け散るがその時に死王側では光が弾け散る。やった、防御魔法を貫いたか?
「ウンバラバッパ砲!」
地上に降りているアルスの手から発生したエネルギー波が死王に突き刺さる。
「効いてるぞ! たたみこめっ!」
アルスが手を上げる。それを皮切りに様々な属性の攻撃が死王に降り注ぐ。
「下れ神の鉄槌! メテオストライク!」
学長の声が響く。天から巨大な隕石が轟き来たり、僕らは死王から距離を取る。
死王がいた所には爆炎のドームが出現し、辺りを熱風が荒れ狂う。
そして、収まった時には大地にはぽっかりと黒い穴が空いているだけだった。