第十七話 塩の中の死王
「塩山に入っても問題ない者だけで行く!」
僕はみんなの前で声を張る。今は塩山の入り口にいる。自己申告制で塩山のデバフの効果を試すことにした。
「マリー様、あたしたちは駄目みたいっす!」
マグロたち邪神ズは予測どおり留守番確定。塩山は特に闇系の生き物によくきくみたいだ。久しぶりに会ったタコの能力を見たかった。
「お母さん、あたしは大丈夫!」
金色の巨大カブトムシの化身シャルは大丈夫みたいだ。塩山は金カブにがつがつ掘って貰おう。
「あたしたちは大丈夫よ!」
サリー、アナ、モモさんもおけ!三人とも身体能力高いから助かるな。
「俺たちも問題ない!」
王子、アルス、学長それにウシオも大丈夫みたいだ。心強い。
「私は無理です!」
ドライアードのメイさんは留守番。もともと冒険者じゃないしな。
「私は勘弁してほしい!みるのもいやだ」
ヴァンパイアのロザリーは遠くで見学みたいだ。
「頑張ってねー!」
母さんも見学だ。魔法で出来た幻体みたいだしな。
思ったより、多くの人数で塩山に行けそうだ。死王相手なので多いに越した事無い。
OKメンバーで塩山の山頂に登り、掘り始める事にする。
「これ、掘るの地獄だな」
僕は金色のカブトムシに乗っている。角をブルドーザーみたいにつかって山を少しづつならしている。それを離れてみんなが見ている。
協議の結果これが一番早いだろうという事になったが、面倒くさい。かったるい。塩って水に溶けるよな。
「止めた!止めた!一端退却!」
塩山から一端出て提案してみる。僕の魔力を活用し、空から魔法で発生させた大量の水を巻いて塩を溶かして流す。その方が間違いなく早い。
「私の部下たちはそれで無事に助けられるのか?」
ヴァンパイアのロザリーが手を上げる。
「塩が塩水に変わった位でヴァンパイアは消滅するのか?」
逆に僕はロザリーに尋ねる。
「問題ないだろうな」
あとは満場一致で決定した。
「水よ洗いながすのかしら!」
金色のカブトムシのシャルに僕とベルは搭乗し空をホバリングしている。ベルは左手で僕から魔力、右手から大量の水を放出している。僕達の後ろには巨大なイカが浮遊していて、その下の籠にみんな居る。
水は増え続け、白い塩を溶かしていく。
「さらに加速!」
まるで滝だ、巨大な滝が僕達の目の前に現れる。飛沫が七色の虹のアーチを空にかける。幻想的な光景だ。
「凄いでしょ!」
ベルが僕を振り返り微笑む。頭の中が残念でなかったら極上の美少女なんだけどな…
「おい!ベル、ずれてるずれてる」
「ごめんなさいかしら」
ベルは滝の方向修正する。
氷砂糖が溶けるように、少しづつ山のへりが削られていく。もし掘ってたらいつまでかかったか分からないな、これでも、時間がかかっている。
「マリー、とっても綺麗な景色かしら」
微笑むベルもとても綺麗だ。
「なんか砂山に立っておしっこかけてるみたいだな!」
後ろから声がする。見ると100%状態の神と見まごう金色の鎧を纏ったアナが風に髪を翻し立っている。神々しい格好で、しょうもない事を言わないで欲しい。
「いきなり出て来てばかな事いうな!」
「ばかはお前だ!感じないのかこの巨大な波動を」
アナの手に二本の槍が顕現する。フォボスとダイモス、アレスの子供の名前を冠した神槍だ。
『マリーちゃん!逃げるのよ!』
母さんの声が頭に響く。
砂山から無数の光の槍が飛び出して、金カブとイカを貫く。
「タッチヒール!」
僕は金カブを癒す。黒いものが目の端に映る。漆黒の鎧を纏った騎士。体からは黒い炎のようなものが噴き出している。迂闊だった。もっと塩山の中央の方にいると思ってたのに。
僕達の前に伝説の存在、『死王』が顕現した。
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