第十二話 つかの間の友好協定
「脅すような事をして悪かった。これからは対等な友人としてよろしく頼む。お前らが敵対しない限り、僕たちは決して危害を加えない。とりあえず、椅子に座ってくれ」
僕はうずくまるロザリンドの肩に軽く触れる。
「ひいっ!触らないで!」
ロザリンドは弾かれたように飛びすさる。嫌われたもんだ。
「おいおい、それはひどくねーか?」
さすがに、まぁ、見た目は可愛い女の子にそこまでされると傷つく。
「ひどいのは、あなたの方です。あなた、聖女!わたし、ヴァンパイア!触れただけで火傷します」
あ、嫌われてたわけじゃなくて、僕のタッチがダメージを与えていた訳ね。
「すまない」
僕は頭を下げる。悪い事したな。
「全く!今日は散々ですわ!寝てて気がついたら塩の中に埋もれてるし、なんとか生き延びたら、破滅の聖女に会うし!」
ロザリンドは立ち上がり、頬を膨らませて、ぷりぷりしながら席に戻る。
サリーが僕に目配せする。今がチャンスと言うことか?
「ロザリンド。僕たちは、君の塩に埋もれた仲間たちを助けるのに全力で協力する。あと、さっきも言ったけど、君と争うつもりは全くない。だから、怒らないで聞いてくれ」
僕はロザリンドの目をじっと見つめる。
「なにかしこまってるのよ。私があなたたちに怒るわけないじゃない。さっき友好協定結んだばかりでしょ」
ロザリンドは興味なさそうに残ったコーヒーを口に含む。
「すまん、君を塩漬けにしたのは僕たちなんだ!正確にはここにいるハイエルフのベル!」
ぶぶぶーっ!
ロザリンドは盛大にコーヒーを噴き出した。リアクション芸人みたいだな。
「ぶっ殺す!」
ロザリンドは立ち上がると、舌の根の乾かぬうちに友好協定を反故にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、仲間掘り出すの協力してくれるのよね。約束しろよ!」
ロザリンドはボサボサの髪でコーヒーを飲んでいる。僕を見る目はまるでテロリストみたいだ。所々、火傷と泥で汚れてる所が戦闘後の軍人感をかもしだしている。
「当たり前だ。僕たち友達だろ!」
僕もボサボサの髪でコーヒーを飲んでいる。僕は笑いかける。まるで、ヤツからは慈母のように見えてるはずだ。
「けっ!友達ね!その気持ち悪い薄笑いやめやがれ!」
「お前こそ!そのムカつく目つきやめやがれ!」
「人の親から貰ったきれいな目に文句つけるな!」
ぶぶぶーっ!
ロザリンドは口に二本の指をあて、僕に毒霧をかませてきやがった。モロに目に入る。口から噴き出すのが好きな奴だな。
「やんのか!コラァ!」
僕は椅子を蹴って立ち上がる。仲間たちは遠巻きに見ている。第二ラウンド開始だ!