第十話 吸血鬼の女王
「あなた達はとってもついてるわ。それでは今回だけ特別に選ばせてあげる。ゾンビコースかスケルトンコースかヴァンパイアコースか!」
ロザリンドは優しく笑みを浮かべる。歯がみえて、尖った牙が見える。やはり、ヴァンパイアなのか。少し感性がずれてそうだな。
「うーん、どれにしようかなーっ。ととっ!すまんけど、それ全部いらんわ!」
なんか変な感じだ。ロザリンドの目を見ると一瞬三択のどれかを選びそうになっ。た
魅了の魔法かスキルだな!
これは精神攻撃。宣戦布告とみなす!
そもそも何が悲しくてアンデッドにならにゃいかんのだ!
微塵もご褒美になってない!
「えー、おかしいですわね?大体みんなそれのどれか選ぶのに、贅沢ですね。それでは、何が欲しいのでか?」
ロザリンドはぷーっと頬を膨らませる。多分アンデッドになるって言ったら血を吸おうとでも思っていたのだろう。
「僕が欲しいのは、お前たちとの不戦協定だ!」
「不戦協定?戦わないってこと?面白くないわ!あなた人間でしょ?それはちょっと、いえ、すっごく贅沢すぎるんじゃないかしら?」
ロザリンドは微笑んで小首をかしげる。けど、その目は笑ってない。
「お前、ヴァンパイアの王だろ。礼をすると言ったよな?」
「確かに言ったわ。お礼はするけど、水とご飯の対価で私たち一族との友好関係は釣り合わないわ」
ロザリンドは優雅に椅子から立ち上がる。
交渉決裂って訳か。
急に辺りの温度が下がったような気がする。彼女は冷たく僕に微笑みかける。心臓が跳ね上がる。さすが吸血鬼の女王、少し魔力を解放するだけで、弱い生き物は殺せるのだろう。ウシオが立ち上がろうとするのを手で制する。
「おい、まだ、話は終わってない!座れ!」
僕は魔力を右手に集中する。前に発動した飛ぶタッチヒールを発動直前で止める。
ロザリンドの顔が引きつる。大人しくまた席についた。素直でよろしい。
「平和に話し合いで解決しようではないか」
僕は唇の端を上げる。
「そうね、話し合いましょう。争いは何も生まないわ」
ロザリンドは満面の笑みを浮かべる。
おいおい、言ってる事が変わってるな。さっきは不戦協定は面白く無いって言ってたくせに。
僕の魔力にびびったな!
「マリーちゃん。ここからはあたしに任せて」
サリーが僕をみてウィンクをする。う、僕もそれしたい、悲しいけど僕はウィンクは下手だ。力が入りすぎてしかめっ面になってしまう。
せっかくだから、ここで一息つこうと思う。多分これからサリーが言葉で無双するはずだからゆっくり眺めさせて貰うとしよう。きっとロザリンドは僕達を挑発したことを心の底から後悔する事になるだろう。
僕は収納からコーヒーを出してみんなに振る舞った。