第九話 ヴァンパイアミイラ
「お水をいただいて、ありがとうございます。助かりました。もし、よろしければ、血か肉となんか服を貰えたらもっと助かるのですけど」
少しだけみずみずしくなったミイラが、流暢に話した。なんか図々しいやつだな。
僕たちみんなずぶ濡れになったので、一旦着替えてヴァンパイアミイラを探した。結構流されてて、あと少しで、やつは塩山に逆戻りになるとこだった。
「その前に普通は名前を名乗らないか?」
礼はもらったけど、名乗りもせずに協力を求めるのは不躾だろう。
「申し訳ございません、知り合い以外の者に会うのは久しぶりで礼を欠いておりました…」
ミイラは深々と頭を下げる。
「私の名前はロザリンド・アトローポス!この地のヴァンパイアを統べてた者です。今は朽ちかけたこの身しかございませんが…」
僕はサリーに目配せする。サリーは頷く。
いきなり掘り起こそうとしてたものに当たった!
向こうから来てくれるとはラッキーだ!
あとは、怒らせないように説得すれば、エビシからのクエストは、完了だ!
「僕の名前はマリー・シドー。あと、サリー、シェイド、ベル、メイさん、ウシオだ」
僕は順番に仲間を紹介する。一応警戒して少し距離は取ってる。何かしたら、ウシオが問答無用でぶっ飛ばすだろう。
「これ使って下さい」
サリーがミイラに服を渡す。
ミイラは後ろを向きのろのろと服を着た。
「悪いけど、たいしたもてなしはできない。血はやれないから肉で我慢してくれ。こちらへどうぞ」
僕は手招きする。
「かたじけないです」
ミイラは深々と頭を下げた。今の所あんまり悪い奴には見えないな。
僕たちは、食卓へ戻った。
「すみませんけど、おかわり頂いてもよろしいですか?」
僕とベルは、ドラゴンの肉の表裏に塩コショウを振って焼き色が付くまで焼く。レアと言うより殺菌しただけのほぼ生だ。それをロザリンドの皿にのせる。始めのうちは、食事速度は緩慢だったけど、徐々に加速して、追いつかなくなってきた。一ポンド位づつ焼いてたのを倍の量にする。
ロザリンドは食べるにつれて、肉がついて若帰っていった。シワが減って肌がみずみずしくなっていく。僕たちみんな、きらきらした目でそれを見ている。食いっぷりも豪快ながら、その変化が面白くて。
僕とベルはガンガンステーキを焼く。ロザリンドはそれをペロリと平らげてく訳だが、エレガントだ。急いでいる訳では無いのにどんどん肉がなくなっていく。
干物のようだった顔も、今はすっかり普通の人間と変わりない。つややかな真っ白の髪に真っ赤な目でに白い肌、目は大きくて目力がある。年は二十歳未満に見える。正直美少女だ!ミイラだったとは思えない。浄化しなくて良かったと心の底から思った。
「ごちそう様でした!」
ロザリンドは手を合わせて、シルバーを置いた。正直どれだけ肉を焼いたか解らない。
「とても助かりました。ありがとうございます。私の名にかけてこのお礼は必ず致します」
ロザリンドは、誰もが見惚れるような笑みを浮かべた。