第六十五話 なんとかの沙漠
「るるるーるるるるー、はーるばーるとー♪
るるるーるるるるーゆーきーましたー♪」
ベルを先頭に僕達は進む。なんか聴いたことのある歌を歌ってる。何とかの砂漠って歌だったと思う。歌詞をそこだけしか知らないのか、同じフレーズをエンドレスだ。たしか日本の歌なはず、なんでベルが知ってるのだろう。
「ベル、その歌どこで習ったんだ?」
ベルは歌うのをやめる。
「ん、多分迷宮都市よ!あんま覚えてないかしら!」
ベルはツインドリルを振りながら振り返る。なんか風も無いのによく動く髪だな?自分の意思で動かせるのか?
「ん、おかしくないか?迷宮都市には砂漠ないだろ」
「それが、有るのよ。地下何層かが砂漠エリアのはずかしら」
後ろ向きにぴょんぴょん歩きながら答える。なんか無駄にベルだけ元気だな。
「なんで、お前だけそんなに元気なんだ?」
元凶のこいつだけ元気ってのが、カンに障る。
「サリーの分身の断末魔のギルティビームって聖属性だったでしょ、だから聖なるものに近い順にベル、マリー、メイの順でダメージが低く、邪悪なものに近い、牛男、シェイド、サリーの順でダメージが多かったわけかしら」
一番邪悪なのは間違いなくベルのはずだけど、納得いかないが種族特性の問題ならしょうがない。
「ちょっとまって、なんでベルが聖なるもので、あたしが邪悪なわけ!」
サリーは我慢ならなかったみたいだ。
「ベルは、神に近しいハイエルフですぅ!サリーはニュートラルのはずの人間の中でも欲深いから闇の方が近いですぅ!もし、嫌だったら、しこたま神殿に寄付でもするのかしら!」
ベルがサリーを挑発する。サリーを挑発するベルはとても楽しそうだ。生き生きしてる。
「なっ!無理!寄付だけは無理っ!」
「はい!サリー強欲!闇落ち確定かしら!」
「寄付するくらいだったら闇でいいわ!お金で買える加護なんていらないわ!」
僕はここでサリーに助け船をだす。
「ちょっといいかな?聖属性に耐性があって、なんかいいことあるか?聖属性の攻撃を食らう機会あるかな?」
「そうよね、天使とか神様系と戦うことなんて普通ほとんどないし。罰当たりなベル以外の人には聖属性耐性って無駄スキルよね。闇属性耐性を伸ばすためもっとガンガン強欲に闇落ちしていくわ」
それはそれでどうかとは思うが、サリーがそれでいいのならいいだろう…
「るるるー沙漠をー♪」
気が済んだのか次はサリーが歌い始める。覚えたのか。
「グラビティ・ゼロ!」
やはりスキルは発動しない。
「ベル、いつになったらスキルとか回復すると思うか?」
「多分、砂漠を出たら大丈夫じゃないかしら?サリーの分身とベルの分身の魔法が絡み合ってここら一帯が汚染されてるみたいかしら。はっきり言って、ベルの分解の魔法より、サリーの苦痛プラス封印の方が地味だけど厄介かしら」
サリーが歌うのを止める。図星だから心にささったのだろう。
しばらく辺りを沈黙が支配した。