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第五十二話 紅い夕日の中の晩餐


「うん、ステーキもワインも最高だ!」


 濃厚なバターのようなフォワグラが、比較的あっさりとしたヒレ肉に味わいの深さを与えている。ソースも最高だ!ブラウンソースにしっかり具材を煮こんだスープにトリュフの香りがアクセントをつけている。


 ワインは、多分カベルネソーヴィニヨンのブレンドだ。飲みやすい中にもコクがあり、ベリーのような香りが鼻をくすぐる。マリアージュだ!


 何も無い荒野に点が見えみるみる大きくなっていく。スケルトンだ!ベルの足下の影が大きくなり黒ベルが現れる。


 スケルトンと黒ベルはしばし対峙する。黒ベルは手に持った何かを投げつける。その茶色いものはスケルトンにあたると飛び散り、あたった所が溶けていく。


 アンブロシアだ!


 食事中には言うのがはばかれるような物体だ。


 最低だ!


 スケルトンは数発くらうと動かなくなった。確かに聖属性の食べ物?だけど、こんな効果があったとは!けど、普通の神経の持ち主だったらアンデッドに会って、これを投げてみようとは思わないだろう。


 向こうからスケルトンが駆けてくる!


 ベルの足下から、今度は数体の黒ベルが出現する。


 黒ベルの一方的なアンブロシア合戦が始まった。


「確かに美味しいわね!」


 サリーが遠い目をして言う。言葉とは裏腹に食事は進んでない。


 荒野に沈む紅い夕日を眺めつつ僕達は食事をしている。


 夕日にグラスをかざしてワインを口のなかに流し込む。まるで夕日を飲み込んだようだ。


 素晴らしい!


 最高だ!


 ウシオは黙々と食事をしている。何事も無かったかのように。けど僕は見逃さなかった。ウシオのこめかみに一筋の青筋がたってるのを。


「さあ、皆さん、食事が冷める前に召し上がりましょう!」


 絶世の金髪美女がパンを千切りながら、女神もかくやという笑顔で僕達を見渡す。


 ぶっ殺してー!


 最高な食事をこんな形でぶち壊すとは…


 とりあえず、僕は平静を保つ。食事を楽しもう…


「皆さん、よく、こんな状況で食事できますね…」


 メイさんが呟く。目が怯えている。


「メイさん、それは普通の感覚だけど、気にしたら負けよ!今はただこれからの事は忘れて、今の一瞬を楽しみましょう!ここはレストランの中だと信じて!」


 サリーがメイさんを優しく諭す。けど、そのサリーの目はなんというか全てを諦めたかのように光がない。


 スケルトンは数を増し、ゾンビも混じっている。黒ベルも増えて、数十体はいると思われる。彼女たちは、手に茶色い物体を持ち、ごいごいアンデッドにそれを投げつける。グチョッとかベチョッとかきったねー音を立てて、命中するとそこからドロドロアンデッドが溶けていく。


「ていゃーっ!」


「はいーっ!」


「とおうりゃーっ!」


 なんか黒ベル達が掛け声までかけ始めた。ガン無視されてるのが嫌で、僕らの気をひこうとでもしてるのか?ベル同様ウザい奴らだ!


「すごいわね!アンデッド一体も近づけないわね!」


 サリーが呟く。


「何のこと言ってるんだい!サリー!何も起こっていない。僕達はただ食事を楽しんでるだけだ」


 今までの人生でこれほど美味しく感じれない食事は初めてだった……


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