第五十一話 レストランでの会食
カラン!
入り口の扉に付いてるベルが鳴った。他のお客さんか?
僕達の他に今はお客さんは居ない。前菜はお任せ、メインはヒレ肉でお任せでギャルソンに頼んだ所だ。
「ご一緒してもよろしいですか?」
振り返ると絶世の美女!
僕達は、しばらく息をするのすら忘れた。
金色のウェイビーな髪に尖った耳、エルフだ。白い肌にやや小振りな胸。胸の谷間が見える緑色のドレスを着ている。首元には、煌びやかな宝石をあしらったネックレスをしている。何処かで会った気がするが思い出せない…
ギャルソンが椅子を持ってくる。それに優雅に座る。
「同じものをお願いします」
サリーがギャルソンに頼む。僕は彼女に目がいってて気が回らなかった。
「初めまして、私、登録所の受付をしてるメイと申します!」
さすが受付嬢、コミュ力高い。
「僕はマリー、彼女はサリー、冒険者だ!」
少し緊張してぶっきらぼうになってしまった。
「存じあげておりますわ。わたくしは、ハイエルフのベルサイユ。今後ともよろしくお願いいたしますわ」
ベルサイユ!
ん、ベル!
あ、ベルだ!!
『えーっ!!』
僕とサリーの叫び声がハモった。
「ベルサイユって事はベルなのか?」
ベルは今、子豚のような生き物のはず。けど、よく見ると、継ぎ目のない世界で会ったベルにそっくりだ。
「はい!ベルですわ。ハイエルフのベルと言えば、わたくししかおりませんわね」
「ご主人様、間違いなくベルです。まとってる空気がベルのものと一緒です!」
ウシオが僕を見る。まとってる空気ってどういうことなんだろうと思うが、とりあえずスルーする。
「なんで、大きくなってるなんだ?」
「さすがに、このような店には子供は入れませんから」
前菜と食前酒が運ばれてくる。ローストビーフのカルパッチョだ。僕はみんなに取り分ける。まずは、乾杯だ。
「迷宮都市に乾杯!」
『乾杯!』
みんなで乾杯する。ベルにもグラスをもらってサリー以外はスパークリングワインだ。ワインの後、前菜を口にする。うん、美味い。まあ、ベルの事は置いといて、食事しよう。
「因みに、メイさんは、冒険者とかの経験はお有りなのですか?」
ナイフとフォークを器用に扱いながらベルが聞く。
「いえ、私は戦闘能力ないですから、回復魔法と木属性の魔法と闇魔法と時空魔法と時間魔法と古代魔法を少し使えるだけですから…」
メイさんが少し上気してこたえる。もしかして魔法のプロフェッショナルなのか?
「超加速はお出来になられますか?」
「はい!多少なら?」
「それでは大丈夫ですわね!」
ベルはメイさんににっこり笑う。
何が大丈夫なのか?
嫌な予感しかしない。
「失礼ですけど、もしかしてベル様って王族なのではないですか?」
「はい、そうだったこともあるかしら」
やっとベルの『かしら』語がでた。そろそろ化けの皮が剥がれるのか?
次は色んなチーズのトッピングされたサラダが出て来た。ドレッシングはシーザース系だけど少し酸味が強い。ラビリントスドレッシングとギャルソンは言ってた。チーズとワインはやはり相性抜群だ。スパークリングワインがさらに美味しくなる。
「マリーちゃん、あたしにも少し飲ませて」
サリーが僕のワインを口に含む。
「なんか、チーズの後に飲むと美味しい」
僕のワインはサリーに取られた。ギャルソンが新しいグラスを持ってくる。
次はメインディッシュだ。僕は料理に合わせた赤ワインを頼む。まずはギャルソンが赤ワイン用のグラスをセットしワインを持ってきて僕にテイスティングさせる。うん、オッケー。メインディッシュが運ばれてくる、子牛のヒレ肉のロッシーニ風ステーキだ。ソースはペリグーソース。トリュフの香りがする。
カラン!
扉が開く。誰かが入って来る。
「マスター、受け取るのかしら」
ベルはギャルソンに大金貨を二枚渡す?
来訪者を見ると黒ベル?黒ベルはスタスタ歩いて来る。僕の隣に来ると一瞬にして溶けて床に黒いしみになって広がっていく。
僕は浮遊感に包まれて、次の瞬間にはあたりが岩だらけの景色に変わり熱風が吹き付けたと思ったら、軽くめまいがして、今度は地平線が霞む荒野のにいた。左手には山が見え、そのてっぺんにはお城が見える。
「多分、あれが骸骨城かしら!料理が冷める前に食べるのかしら!」
僕はナイフとフォークを取る。今は何も考えないでおこう…