第三十四話 聖女どぎまぎする
僕は気が付くと、ベッドに横たわってた。見慣れぬ天井、ここはどこだ?
頭には、冷えた絞ったタオルが置いてある。ひんやりとして、気持ちいい。
「ううん!」
誰かの声がする。なんか息苦しいと思ったら、床に座ったモミが、僕の胸に頭を預けている。口を開けて寝ていやがる。はた迷惑なやつだけど、寝顔は間違いなく天使だ。
二人とも服を着ている。良かった、また、気を失いたくはない。さっきは、刺激が強すぎた。思い出すだけで、顔が熱くなる。どうも、今の僕はかなり体が弱いみたいだ。興奮し過ぎると気を失うみたいだ。
「んーっ、起きた?」
モミがよだれを拭いながら、頭を起こす。相変わらず女子力弱いやつだ。
ちなみに、僕の格好は、タンクトップにカボチャパンツ、胸がパツパツで苦しい…
モミは、キャミソールにショーツ姿だ、目のやり場に困る。
「なーに、赤くなってるのよ!かわいいわねー!」
モミが、そらした僕の目線の先に移動して、僕をのぞき込む。不覚にも少しだけ可愛いと思ってしまった。恥ずかしくて、モミの目が見れない。プイッと顔を背けてしまう。
「あら、もしかして、照れてんの?あたしが可愛いすぎるから、キャハハハッ!さっき、急に倒れるから、びっくりしたわよ、あんたほんとにお酒弱いわねー!」
まだ、こいつは酔っ払ってるのだろうか?
「そ、それより、お、お前、さっき、どうやってバスルームに入ってきたんだ?」
「教えてほしいー、教えてほしいー、内緒ーーっ」
うぜー、この脈絡のなさ、間違いなくこいつはまだ酔っ払ってる。
モミは多分空間移動系の能力を持ってるのだろう。そんな強力なスキルをもってて、なんで、冒険者ギルドの職員してるのだろうか?
「それならねーっ、ちゅーしてくれたら教えてあげるー」
僕は真っ赤になってるのを自分でも感じた。痛い位に心臓の鼓動が早くなる。こいつ、僕の弱点を見つけていたぶってるな。
「も、モミっ、あっ、そうだ、服、ありがとう。」
や、やばい、こんなリア充っぽい空気、僕は耐えられない…女の子どうしだけど…
「どういたましてー、それよりー、もう!大変だったんだからー!息してるか確認して、気を失ってるだけみたいだったから、髪と体洗ってあげて、体拭いて、髪乾かして、運んで服着させてって感じよ!いろんなとこいっぱい触っちゃったけど!キャハッ!」
うわ、何て凄まじい事されてんだ、僕…
やばいめっちゃ恥ずかしくなってきた。これ以上、こんな空気僕には無理だ…
「じゃ、もうそろそろ帰るよ」
「ダーメーよー」
モミは、立ち上がると、テーブルからジョッキを取り飲み干す。まさか、まだ、飲んでるのか…
勘弁してくれよ…
「あんたは今日はあたしの抱き枕になるのよ!!」
モミは、ビシッと僕を指差す。
「無理、無理、帰る、帰る!!」
帰ろうとする僕の手をモミがとる。猿なみの僕の腕力、引き離せない。モミに引っ張られて、ベッドに押し倒される。
「キャハハハハハハハッ!マリー、止めて、止めてーっ!!」
力で敵わない僕は、モミをくすぐってやった。これはいかん、薄着なので、触れ合ってるとこ多いし、いろんなとこが見えそうだ。
「判ったわ、もう、帰っていいから、止めて、止めてーっ。キャハハハッ」
僕は解放してやる。こっちもある意味やばかった。
「マリー、いいものあげるから、そこに座って」
何だろう?僕はベッドに腰掛ける。
モミは、どっからか紐でしばってある巻いた古そうな紙を持ってきた。
「???」
モミは、それを広げる。
「スリープ!」
紙から出た黒いもやが僕を包み込む。いかん、こいつを舐めすぎた!嫌な予感がする!
「な、なんだ!!」
「眠りの魔法のスクロールよ、裏もので一回しか使えないけど、買っててよかったわ。エルフは目的のためには、手段を選ばないのよ!」
エルフとは、何て恐ろしい生き物なのだろう。僕の魔法耐性はかなり高いはずなのに、だんだん眠くなる。どれだけ高額な物だろうか?こんな使い方して馬鹿なのか!
「さあ、抱き枕になるのよ!」
モミの声を遠くに聞きながら、僕はまどろんでいった…