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 暗殺者の少女


「くっ、殺せ!」


 少女はターゲットだった太った男を睨みつける。名前は確かルドラと言ったはずだ。

 少女は屈強な男に羽交い締めにされて動く事はできない。辺りには何人目もの護衛である男たちが集まってきている。

 少女は自殺願望があるわけではなく、自身の持つ最終で最悪の方法を取ろうとしただけだ。今まで何度もこの方法で切り抜けて来た。気は進まないが、ポケットの中には上級の回復薬がある。一撃で絶滅しない限り問題は無い。


「ぐふふふふっ、そう簡単に死ねるとおもうなよ、少しづつ切り刻んで、十分楽しませて貰ってから犬のエサにしてくれる」


 太った男は少女から奪ったナイフを舐めると少女に近づいてくる。


(一網打尽にしたかったけど、まずはターゲットだけで我慢するか)


「来ないで!この豚野郎!」


 少女は太った男の顔に向けて唾を吐く。


「ルドラ様、危ない!」


 護衛の男たちの中から飛び出した黒装束の小男が、少女の吐いた唾をタオルで受け止める。そして、そのタオルを少女の口に詰め込む。


「ルドラ様、こやつの名前は毒の処女(ポイズン・メイデン)、流れの暗殺者です。こやつの体液は全て猛毒で、直に触れた者はすぐに解毒しないと死に至ります」


「な、なんだと、それで儂を挑発したのか。血を撒き散らそうとしてたのか。けど、使えそうな奴だな、契約の指輪を持って来い」


 しばらくして、ルドラに召使いが指輪を差し出す。そして、それを少女の指に嵌める。


「これで、お前は俺のものだ。逆らったらその指輪がお前を焼き尽くすだろう。サンシロウ、お前にそいつは預ける。お前、ヤッて死ぬなよ。ぐふふふふっ!」


 サンシロウと呼ばれた小男の方に少女は突き倒される。


「あーあ、任務失敗。しかも奴隷になっちゃった…」


 あまり、残念ではなさそうに、あっけらかんと少女は言う。


「お主、大丈夫か?」


 サンシロウの差しだした手には少女と同じ指輪がはまっていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「なんで、あんたあたしの邪魔したの?」


 少女はサンシロウに問いかける。ここはサンシロウの部屋。今日から少女も一緒に住むことになる。


「それは、拙者はお主を斬りたくなかった。それだけだ」


「へー、サンちゃんもしかしてあたしに惚れたのー?じゃ、あたしとヤッてみるー?」


 少女はサンシロウの首に手をまわす。


「ばっ、馬鹿かっ!拙者はまだ死にたくないでござる」


 少女は孤児で、ここから遙か遠くの帝国の都で生まれ育った。沢山の孤児と一緒に暗殺者ギルドで毎日毎日毒を飲んで、生き残ったのは彼女だけだ。彼女の体液は猛毒で、あらゆる生き物に用意に死をもたらす。ギルドからは逃げ出したけど、出来る事は暗殺でそれで食いつないできた。あと、彼女は気付いていた。体内に蓄積した毒のおかげで長くは生きられない事を。


 そんな彼女に手を差し伸べたのはサンシロウが初めてだった。しばらくはここにいてもいいと思い初めていた。


「冗談よ、あたしもあんたに死んで欲しくないわ。オフィーリアよ、よろしく!」


 サンシロウとオフィーリアは固く握手をした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「サンシロウ…」


 マグロはウニのかつての名前を呟いてみる。


「…なんでござるか、オフィーリア…」


「ウニ、昔の口調だよ」


「なんだよ、マグロ」


「あたしの中にあった毒は全部マリー様が綺麗にしてくれた。ウニとマグロになれてよかったよね」


「そうだな、ウニになって良かった」


 ウニとマグロは見つめあって破顔した。



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