第17話 出発の朝
「うーん!おはよう!」
僕は目を覚ましのびをした。よく眠れて爽快だ、何故かいっぱい泣いたあとはよく眠れる。マリーは涙腺が弱すぎる。ん、多分魔力も全快だ。
僕は立ち上がり、自分の影に沈み込む。シェイドの部屋でシェイドにタッチして貰って、久し振りに男の体、キラ・シドーに戻る。
そうだよ、キラのままだったら、思う存分一人で入浴出来るし、一人で寝れる。男にタッチしなければいいんだ!全身鎧で覆って、直接タッチ出来ないようにしよう!
僕は、影から出てベッドのわきに立つ。視線が高いのが気持ちいい。
「ま、キラさんおはよう!」
モモさんが起きてくる。
「マリーちゃんおはよう!」
サリーはまだ寝ぼけている。
アナと金カブは安全を確認して、自分の部屋でねている。
僕たちは、部屋から出ると、簀巻きになったアルスと目が合う。
「お前だれだ!なんでマリーの部屋から出てきた!」
アルスの殺気が膨れ上がる。そうだ、初対面だ!
「ぶっ倒す!」
アルスが簀巻きのまま凄む。
うーん、なんて説明しようか?こいつに触ったり、触られたらアウトだ!
「俺の名前は、キラ・シドー、マリーの親族だ」
出来るだけ低めの声を出す。なんかマリー率九割くらいで、キラである自分が自分じゃないようだ。今まではずっと男だったのに。
僕は相手を知ってるけど、アルスは僕の事を知らないはず。ぼろが出ないようにしないと。ん、けど、ばれた方がいいのでは?そしたらつきまとわれないのでは?
「親族って親類なのか?なんか関係性がピンとこないけど、ま、いいか!それで、マリーはどこなんだ?」
「悪いが、マリーには訳あってここにはいない!個人的な事だから、詮索はするな!代わりに俺がついて行く!」
「あん、お前、なに仕切ってんだ?お前強いのか?」
アルスが布団にくるまれたまま、超ガンたれてくる!
ヤンキーか!
「これで終わりだな!」
僕は、アルスの首元に突き付けた木刀を降ろす。
「負けだ!俺の負けだ!お前強いな!一緒に行くことを許してやる!」
アルスは納得したようだ。ここは城のトレーニングルームで、加速能力でアルスをいたぶった。アルスのスピードよりは僕の方が上だ。
「頼もしい限りだな!これからも宜しく!」
アルスが右手を差し出す。少し躊躇い、僕は手袋ごしに握手する。直接接触が変化の条件みたいで、マリーにはならない。
「よう!キラ、元気だったか?よく眠れたか?俺はお前のおかげで昨日は悶々だったよ!」
ギル王子が背中を叩いてくる。ん、僕のせい?なに言ってんだ?こいつは?
僕たちはサンドリバーの中庭に集合してる。イカが巨大なイカに変身して宙に浮いている。その下には、僕たちが乗り込む籠がある。騎士団も整列している。
「これから、魔領に向かう。もしかしたら、ここにもう戻って来れないかもしれない。別に強制はしない、力を貸してくれる者はついてきて欲しい!」
僕は籠に乗り込む。
『あたしたちは、当然ついてくわ!』
サリーとシェイドが乗り込んでくる。二人並ぶと双子みたいだ。
「わたしも当然!」
モモさんもくる。
「パーティーリーダーの私もいくぞ!」
アナだ。
「俺は冒険者だからな!孤児院のみんなも心配だしな!」
アルスが金色の髪を掻き上げる。こいつはなんだかんだでいい奴だしな。
「サンドリバーの男は前進あるのみだ!」
王子も乗り込む。
「迷宮都市!魔領!行ってみたかったのじゃ!」
学長のじいさんも乗り込む。
「タコとマグロに逢いたいしね!」
ウニだいたのか?
「子豚に復讐しないとな!」
でぶ魔神も乗り込む。こいつは信頼出来ないが必要だからな。
「留守は任せて下さい…」
サクラは涙目だ。連れていって、昨日のお返しをしたいとこだけど、こいつにはこいつの仕事がある。帰って来たらお仕置きだ!
「王子に敬礼!」
騎士団長の号令のもと、サンドリバー騎士団が僕たちに敬礼する。
「では!魔領に向けて出発!」
僕の掛け声でイカが浮き上がる。
まずは魔神の城へ向かおうと思う。
第十二章 サンドリバー協奏曲 完
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