第二十七話 終わりなき戦い
「行け!いけいけ!金カブー!」
僕は歌う!
「走れ!走れ走れ!金カブー!」
サリーも歌う!
「地球はひとつー!地球はひとつー!おー金カブー!金カブー!」
僕たちは肩を揺らして一緒に高らかと歌う。うちの親父が歌ってた歌の替え歌だ。サビのみをエンドレスに歌ってたので、サリーもすぐに覚えた。
金カブの走ったあとには、累々とモンスターたちの死骸が横たわっている。しばらくすると、光って魔石になる。まるで、ブルドーザーだ。
適当に走り続け、だいたいの部屋の形が解った。多分大きな円形だ。
中央くらいにイカが浮かんでいて、触手でバシバシなぎ倒している。どこからどうみてもりっぱな邪神だ!
その回り位をでっかいウニと巨大な岩が転がって死骸を量産している。モモさんとウニだ。
あと、金色に光る下着姿の変質者も走り回っている。元気だな。
魔石の回収もしないとな。
「金カブ!イカの所に行ってくれ!」
あいつが最適だろう。見ると気持ち悪いけど、明らかに10本以上の触手を生やしている。イカなのに。
「イカ!シェイドと協力して魔石を拾ってくれ!」
イカは一番太い触手を上げる。了解の意味だろう。シェイドは僕の収納を使えるので、これでがつがつ回収できるだろう。
「シェイドは、イカ臭いの苦手なのに」
シェイドが僕たちの後ろに現れる。
「あとで、うまいもん食べさせてやるから頑張ってくれ」
「了解!シェイド頑張る!」
シェイドはイカの方に跳んでいく。
よく見ると、モンスターの数が一向に減らない。いつの間にか天井の穴も閉じていて、どうやら閉じ込められたらしい。
この部屋の趣旨はこうだろう。無限に湧き続けるモンスターをいなしながら、何らかの条件を満たして出口を見つけて、ドキドキしながら逃げる。
逃げるなんてもったいない!
骨の髄までしゃぶりつくしてやる!
こんな美味しい狩り場滅多にないだろう!
モンスターが無限に湧くといってもこのダンジョンのエネルギーは無限じゃ無いはず。ここには多分管理者がいる。訝しがられたら、供給をストップされるだろう。そいつに気付かれないように少しでも多く絞りとってやる!
僕たちを、楽しませようとしてるのだろうが、逆手にとってやる!
『金カブ、この念話で皆に伝えられるか?』
『多分できるー!』
『モンスターが湧くのを止めさせないため、疲れたふりをしろって伝えてくれ!』
いい感じにみんな疲れたふりをしてくれてる。けど、攻撃の手は緩めない。
「いつになったら終わるの!もうあまりもたないわ!」
モモさんが肩で息をつきながら演技してくれる。
「最後の力を振り絞る!でいゃー!」
アナがもう何度目か解らない最後の力を振り絞る。
金カブはのろのろと、近づいてくる者たちを足で踏み潰す。
イカものろのろ動いてるが、拾う触手の動きはマッハだ。いい仕事してやがる!
こいつもご褒美だ!
僕たちは弱ったふりをしながら、エンドレスに魔石を回収し続けた。