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第十六話 聖女、虫に乗る


「トオーッ!」


 僕は金色巨大カブトムシの大きい角を蹴り、うまいこと頭の上の小さな角の所あたりに着地する。すべすべつるつるで転びそうになる。


「よーしよし、動くなよ!」


 無事に小さな角を掴む。小さいと言っても太さは僕のウエストいや胸囲くらいはある。ガシッと抱きついて座る。足でも挟む。これでよし!

 子供の頃、よくカブトムシを捕まえたものだけど、それが役立った!

 この位置にカブトムシはなにも出来ない。ここを摘まんで捕まえてたものだ。


「行け!金カブ!蹂躙しつくせ!」


 僕の言葉は通じてるはずはないが、カブは歩き始める。金色というのがなんというかそこはかとなくゴージャスだ!


 高さもあり、気持ちいい!


 見渡すと、先に来てた学生たちは僕を遠巻きに見ていて、僕の仲間たちはカブと距離を取った所に固まっている。


「おい!先に来てた連中、逃げろ!ここは今から激しい戦場になるぞ!」


「逃げたくても、ボスを倒さないと出れないんだよー!」


 ゴージャス鎧の人が大声で叫ぶ。あ、そうなのね。


「それじゃあ、入り口付近で一カ所に固まっててくれ。サリー!モモさん!死なない程度に守ってやってくれ」


「りょうかーい」


「わかったわー」


 サリーとモモさんが手を振って返事する。


「お前だけずるいぞ!私も乗りたいーっ!」


 アナが口に手をあててメガホンみたいに言う。


「悪いがこいつは一人乗りだ!残念だったな」


「マリーちゃん!女の子がはしたない!パンツ丸見えよ!」


 僕の影から先生が顔をだす。にこにこだけど目が笑ってない。見えてるのは気づいてたけど、ま、いっかってスルーしてた。


「ヒャッ!」


 先生に両足を掴まれ、僕の下半身が影にもぐる。もぞもぞして影から押し出されると僕はスパッツを穿かされていた。さすが先生、器用だ。


 他の学生たちがざわめく!


 そんなに僕のパンツ見てたかったのか?


「はい。これでオッケーよ。マリーちゃんはがさつだから、はしたない所はどんどん指導していきますからそのつもりでねー。女の子は自分を大切にしないとね」


「はい…」


 ついつい勢いで返事してしまった。花嫁修行などもさせられそうで怖い。先生は数少ない僕の天敵だし。


 そういえば、金カブおとなしいな?もしかして待っててくれたのか?


 ういやつだ!


「なぎたおせ!」


 僕は右手で空を切る!


 金カブが走り出す。


 やば!めっちゃ気分いい!


 僕たちの前に、まずはアナが立ち塞がった!


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