第十五話 フロアボスとの遭遇
「みんな、来て来て!」
シェイドが楽しそうに僕たちを呼ぶのでついて行ったら、壁に映されるアナの視界の遠くに金色のカブトムシが見える。
「お、レアモンスターか!」
僕は喜んだけど、よく見るとおかしい。カブトムシの前に動く人影が見えるがとても小さい。小人なのか?いや違う。カブトムシがでかすぎるんだ!
「フロアボスよ」
サリーが嬉しそうに呟く。
「レアカラーのフロアボス。10層には一定間隔おきにフロアボスが出現するらしいけど、普通は黒いカブトムシのはずよ。レアカラーの個体は通常よりかなり強いはず、戦いがいがあるわね」
モモさんが嬉しそうに喋る。虫は虫でもカブトムシなら戦えるみたいだ。
「楽しそうねー。腕がなるわ」
先生も嬉しそうだ。
「お姉様は、ここで見てて下さい。戦いになりませんから」
モモさんの言葉に先生は悲しそうな顔をしてソファに座る。
けど、正直先生は強すぎる。僕たちの出番がなくなってしまう。
サリー、モモさん、シェイドと僕は影の中から外に出る。
「お、みんな出てきたか。やっと協力して戦えそうな奴出てきたな」
アナは楽しそうだ。ゴキブリ先輩たちの事を思い出しているのだろう。
僕たちは金色のカブトムシの方へ歩いていく。
カブトムシとは今10人近い人数が戦っている。そのうちの一人がこっちに走って来る。
「君たち、ここは危ないぞ!フロアボスが出現している。丸腰で戦ったら。即リタイアだぞ!」
ローブに杖をもった、魔法使いっぽい男の子が僕たちに大声で言う。まあ、その気持ちはわからんでも無いが。僕たちみんな制服だし。
「お前がリーダーか?加勢して欲しいなら、あいつのドロップ品の金額の8割で手を打ってやるが!」
アナが前に進んで言う。8割は良心的だ。
「8割?ぼったくり過ぎだろう!ふっかけてるのか?助力はいらない!そこで見とくがいい!」
魔術師君はそう言うと戦いに戻って行った。
カブトムシはデカイ!
見ると体高だけで、大人3人分位はある。それに向かって戦士たちが剣や斧などを叩きつけるが、傷一つ付かない。魔法使いたちが、炎の矢や氷の矢などを放つが全く効かない。
逆に、カブトムシが、動くたびに幾人か吹っ飛ばされる。金属鎧の者もいるが、簡単に弾かれる。鎧には激しく傷が付いてる。
「無理だ!」
「逃げろ!」
ネガティブな言葉を吐いて、何人か逃げ出すが、背を向けた者に対して、虫は強力なぶちかましを仕掛ける。速い!食らった者はあり得ないほど宙を舞う。戦闘不能な者は出ていないみたいだが、時間の問題だろう。
僕は堂々と歩き、カブトムシの前に立つ。そして、大息を吸い声を張り上げる!
「こいつは、僕たちが貰った!報酬は全て貰う!文句がある奴は、今ここに来い!」
「馬鹿か!やられるぞ!」
一番高級そうな全身鎧の男が叫ぶ。
「じゃ、お前戦うか?」
「……」
派手な鎧の人は一言も発さない。
「では、遠くで見てろ!異議ある奴はいないな!行くぞ!グラビティ・ゼロ!」
僕は金色のカブトムシに跳びかかる!