第十三話 虫天国
「あいつ、僕らに気づいてるのかな!」
僕は二人に小声で問いかける。僕たちは部屋の入り口にいて、部屋の真ん中にはでっかい蜘蛛がいる。きもい!僕たちは姿を隠して浮いてる状態だ。
「出来るだけ壁伝いで、あっちの通路まで、行ってみましょう」
イカが小声でこたえる。
僕たちはふよふよ壁伝いに移動する。
カサカサッ!
嫌な音をたてて、蜘蛛が動き始める。
僕たちに向かって。
「食らえ!イカ玉!」
イカが汚い玉を放つ。
ただぬるぬるになってより気持ち悪くなっただけだ!
「マリー!ブリット」
小石を弾く。ちゃんと言えたけど、弾かれる。多分ノーダメだ…
「ニードル!」
ウニの手から数本の針が飛び出す。多分これが僕らの最大攻撃だ。けど、蜘蛛の体は固い甲殻に覆われてるみたいで、麻痺針が効いてる様には見えない。正直、相性が悪過ぎる。
「グラビティ・ゼロ!イカ!飛べ!」
あ、こうすれば良かった。僕たちは高速飛行で部屋を後にする。僕たちは飛び回り何度か蜘蛛をやり過ごし8層への階段を見つけた。
「もしもし、逃げる事しかできないんだけど、誰か戦いませんか?」
僕は影に向かって問いかける。しばらく待つと、影からサリーが顔を出した。
「協議の結果、誰も虫とは戦いたくないということで。アナが起きたら、代わってくれるかもです。この調子で10層まで頑張ってねー!」
サリーは影に消えていった。
男の子供二人と手を繋いで、でっかい蜘蛛から逃げまくる。誰得なんだろうと思いつつ、手を繋いで、8層への階段を飛んで行った。
「次は9層だな!」
8層はムカデとナメクジだった。蜘蛛と違いジャンプしないので、天井すれすれを飛び回り、速攻で階段を見つけた。何組かのパーティーも見かけたけど、苦戦してるところは無かったのでスルーした。
「10層突入!」
9層はカブトムシとクワガタ虫だった。こいつらも飛ぶのは下手だったので同様に楽勝だった。まったく戦ってはいないけど。天井付近を飛んで回って、結構広くて迷ったけど、階段を見つけた。ここは人気の狩り場みたいで、二部屋おき位は戦闘中だった。やっぱり皆カブトムシは好きなのだろう。
「こりゃ無理だ!」
10層始めの部屋の中を見るなり僕らは逃げた。部屋は広めで10匹位虫系のデカイ奴がみえた。飛び越えるのは難しそうだ。
「アナ登場!」
僕の影の中からなんか飛び出してきた。アナだ!
「すまん、なんか眠くてな!」
言うなり、部屋の敵の方に走りだす。
僕たちは気がのらないので歩いていく。
「楽勝!」
部屋の中は地獄だった。ちぎれた虫の足や、潰れたカブトムシやナメクジ。ぶつ切りにされたムカデなど、まだピクピク動いている。こいつは武装してないから素手でやったんだろう。なんか、巨人かなんか来て踏みまくったみたいだ。
「お前!虫、直に触れるのか?」
僕はついつい汚いものを見る目でみてしまう。
「当然だろ!私は騎士だからな!」
アナがクルンと回って振り返る。スカートがきわどい所まで舞った。騎士には見えないな、ただのJKにしか。
死んだ虫達が次々と魔石になる。スライムのよりは格段に大きい。結構稼げるのでは?
「騎士って凄いんだな!僕にはとても無理だ。このフロアはアナに任せてもいいか?僕はもう疲れた」
僕は手を胸の前に組んで、上目遣いでアナを見る。
「しょうがないな!任されてやる!しばらく休んどけ!」
うまくなすりつける事ができて、僕は影の中に入っていった。もう、虫は勘弁して欲しい…