第十二話 七層をゆく
「ゴキブリはもう堪能しつくした!」
アナにしては、少し疲れてる気がする。7層への階段の所で僕は影から出て、ウニとイカを待っている。しばらくは虫系らしいので、彼らの力が欲しい所だ。正直虫は勘弁して欲しい。子供の頃はなんともなかったのに、今では子供の頃がなんで虫を触っても平気だったのかが謎だ!とくにゴキブリは気持ち悪い。いくらレアだとしても金色のゴキブリは嫌だ!
しばらく待つと二人が来た。仲良く手をつないでいる。
「お前たち、仲いいな!以外に時間かかったな!」
アナが腕を組んで見下ろす。少し不機嫌だ。
「何言ってんすか?ここまで、姿を隠してきたんですよ!今、お二人を見て出てきたんす。因みに1回も戦ってないですよ!」
「待ちくたびれたぞ、私は少し休むから、しばらく3人で頑張ってくれ!ゴキブリがでたら、起こしてくれ!」
そう言うと、影の中に消えていった。ゴキブリ退治は気に入ったらしい。
僕たちは、7層へ向かう階段を降りていった。何故か手を繋いで。
「え、手を繋いだらみんないけるのか?」
階段を降りながら、僕はウニに問いかける。3人の姿が消えた。ウニのスキルの透明化だ。けど、立ち止まる。足が見えないと階段は怖くて降りれない。
「な、何っ!」
今度は体が浮き上がる。
「あ、これ、僕の飛行のスキルです」
僕の左手からイカの声がする。こいつら、ただ僕の手を握りたいのかと思ったら、こんなスキルのコンボを持ってるとは!これならダンジョンも楽々だ!
ふよふよ漂って、階段を降りた。また迷宮だ。石の壁の通路が続き、一定間隔おきに小部屋があるのが今までの構造で、ここもそうみたいだ。壁に1メートルおきくらいに燭台が設置されてて、その炎が揺らめいている。よく見るとろうそくは作り物で、魔法か何かの火がついてる。雰囲気作りだな。奥の方は光が見えず、誰かが来ると光るみたいになっている。エコだな!
とりあえず、着地して手をほどく。
「役割分担したいんだが、まず、僕はヒーラーだ!投石で補助も出来る!」
僕は胸をはる。ぶるんぶるん揺れて、二人の視線が突き刺さる。子供のなりをしてても中身はスケベな大人だな…
「僕は、そういうカテゴリーで言うと、スカウトですかね!罠探知と解除、飛び道具で補助、隠れて暗殺なども出来ます!」
ウニが考え込んで言う。半ズボンにブレザーの小学科の制服で、特に小柄で朝黒く、目がくりくりしてる。スカウトと言うと聞こえがいいが、要は盗賊系スキルの保持者だ。探索には役立つが戦闘職ではない。こいつの対人攻撃スキルはえげつないけど、モンスター相手には相性がありそうだ。
「僕は、二刀流の剣士ですが剣はもってないです。出来る事はぬるぬるの玉を投げる事と飛ぶ事ですかねー?いうなればジャマー?」
イカはそう言うと、右手を突き出し壁に黒い玉を放つ。弾けてどろっとした液体が壁を汚す。しかもイカ臭い。
「と言うことは、モンスターが出たら、僕らで倒せるのか?」
どう考えても僕たちは戦闘職じゃない気がする。
「まあ、死にはしないんじゃないですか?僕たち邪神化出来ますし!」
「そだね!」
ウニのお気楽なセリフに僕はうなづく。うん、決して死にはしないでしょう!
僕たちはまた手を繋ぎふよふよ浮いて進んで行く。