第十話 シェイドの部屋にて
「やっぱり、マリーちゃんも駄目だったのね!」
目を覚ますとサリーが膝枕で僕の頭をなでなでしてた。今いるのはベッドの上だ。多分僕の影の中のシェイドの部屋だろう。
「男の子なのにだらしないわね…幻滅したわ」
サリーが僕の耳もとで囁く。ひどいな、自分だって逃げ出したくせに。
「おいおい、見くびらないで欲しいな!いきなりで驚いただけだ。本気を出せばあんな奴素手でつぶせるよ」
「じゃ、外に出る?今、外でかいつらをアナが狩りつくしてるみたいよ」
「勘弁してください…調子乗ってました」
僕はすぐに折れた。巨大ゴキブリだけは実際勘弁して欲しい。それを平気で狩りまくっているアナはある意味勇者だ。嫁の行き手はなくなりそうだが。
正直僕はあいつらは二度と見たく無い。
ジリジリジリジリッ!
隣の部屋からタイマーが聞こえて、部屋にモモさんが入ってくる。
「サリー、次は私の番だね。あ、起きたのね、ま、いいわ」
「え?」
サリーとモモさんが入れ替わる。何なんだこれは?
「10分交代で膝枕してるのよ」
モモさんが説明してくれる。
「サリー! 準備できた? 早くー!」
隣の部屋から金髪ボブカットの長身女性が顔をだす。モモさんのお姉さんのクレア先生だ。
「マリーちゃん、やっと気が付いたのー!」
「先生? ところで何をしてるんですか?」
「あのね、モモがトレーニングしたいって言うからついてきたのよー」
先生がこたえる。相変わらずゆっくりな話し方でいつもどおりにこにこだ。
サリーたちに話を聞くと、虫のエリアを抜けるまでは、交代でサンドリバーの大会に向けてのトレーニングをしているそうだ。先生の同行はサプライズで、僕を驚かそうとしたけど機会を逸したらしい。さすがは膝枕はこっ恥ずかしいので、今はベッドに座っている。もったいなかった。
「僕も来てるよ!」
男の子みたいな女の子が入ってくる。モモさんの妹のロロだ、ショートヘアだけど今日は髪の色が緑色だ?
「ロロも来てたのか。髪染め直したのか?」
「あ、言ってなかったっけ、僕の髪の色は毎日変わるんだ」
どういう体質だ?
まあ、変身体質よりは無害だな。
「魔銃の調整があと少しで終わるから出来たら試してね」
そう言うと、ロロは出て行った。
「ちょっと来て、面白い事になってるみたいだ」
シェイドが走って来た。
「面白い事?」
サリーとシェイドが走り出す。僕とモモさん野次馬根性か先生もそれに続く。