第八話 雑踏の痴漢
『おはよう!』
みんなの声がハモる。なんか女子の仲良しグループみたいだな。ま、実際そうなんだけど。今日は僕、サリー、モモさん、アナにウニとイカもいる。
早速学園に向かいダンジョン管理室でブレスレットを借りて、ダンジョンの中地下1階へ向かう。
朝早いのに、いや、朝早いからか、前に進めないくらい人でごった返している。けど、制服なのは、僕たちだけだ。別に特別急いでいるわけでも無いので、行列の進むのを待つ。
「まだるっこしい!全員ぶっ飛ばして進むか?」
アナが痺れを切らした。5分もたってないぞ!
子供か!
「やってもいいけど、間違いなく謹慎になるわ」
モモさん、やってもいいのか?
それに謹慎で済むのか?
緩いな学園!
「シェイドの部屋に入って、シェイドに進んで貰う?」
「止めとこう。これ以上目立たない方がいい」
サリーの提案を却下する。周りの学生たちは、僕たちをジロジロ見てる。まぁ、制服だしな。みんながちがちに装備固めているし。
僕たちの目指す6層への転移魔方陣の前は比較的すいてる。次の11層行きと思われる所が1番人が多い。前に進もうとしても11層目当ての集団たちが邪魔で進みにくい。密集してる所は嫌だけど、意を決してかき分けて進む。一応胸を左手で押さえて進む。さすがに僕たちに痴漢する勇者はいないだろう。
「キャッ!」
僕の口から小さく悲鳴が漏れる。自分ではギャッと言ってるつもりなのだけど、マリーの高い澄んだ声では、こう変換されてしまう。
それは置いといて、誰か僕のお尻を触りやがった!
むぅ、懲らしめてやりたいとこだけど、誰かわかんない。
なんていうか撫でるようないやらしい触り方だった。
「むかつくな!誰かにお尻さわられた!」
立ち止まり後ろを振り返る。いつの間にか僕の真後ろはアナがいた。
ぱちーん!
とりあえず、アナの頭をたたく。
「お、お前か痴漢は!」
「何故わかった?お前が悪いんだ。お前が私の前を歩くからだ!」
「お前は、前を人が歩いてたら尻を揉むのか?」
「なんだ、もんで欲しかったのか!」
「ヒャアアアアーッ!」
僕は耐えられず、悲鳴を上げてしまう!
アナが僕に抱きついて、お尻をもみもみしている。いつの間にか周りのみんなが僕たちを注目している!
「アナ!止めろ!みんなが見ている!」
「わからんのか!見せつけてるんだ!お前の所有者は私であるということを、これで安易にお前を痴漢する奴はいなくなるだろう!騎士である私の抑止力で!」
「今まで公衆の面前で痴漢してきたのは、お前しかいねーよ!」
アナは、自分自身を抑止してほしい!
『マリーちゃんの所有者!』
サリーとモモさんが顔を合わせ、僕に抱きついてくる。
「こっちはあたしの!」
サリーが右の胸を握りしめる!
「私はこちら!」
モモさんは左を両手で掴む!
「キャアアアアアア!」
僕の悲鳴がフロアを覆い尽くした!
かくして、オフィシャルでは僕の右胸はサリーの、左胸はモモさん、お尻はアナの所有物となった!
衆人環視の中ひとしきり揉まれたあとやっと解放された。僕は腰がくだけてサリーにお姫様だっこされる。
進むと自然に人が避けて道が出来る。あ、これってかかわったらあかん奴認定されてるよね!
「これが狙いだ!」
アナがドヤる。
「黙れ!変態!」
僕らはあまりよろしくない方向で注目されながら転移魔方陣に吸い込まれていった。