第十八話 バージンロード
「とっても綺麗よ!マリーちゃん!」
サリーが僕をみて微笑む。僅かに涙ぐんでる。
僕は鏡をみる。そこには純白のドレスをまとった絶世の美少女がいた。頭にはシンプルだけど様々な宝石をあしらったティアラをつけ、下品じゃないけど胸元は大きく空いていて、吸魔のロザリオが胸の谷間の上にのっている。スカートはふんわりしていてふりふりで以外に動きやすい。僕は軽く回ってみたりもしてみた。
夢にまでみたウェディングドレス!
僕は幸せだ!
こんな花嫁をもらえたら…
手袋を付けて、サリーにエスコートされる。母さん父さんは何処いるのか分かんないので、代わりにサリーが引き受けた。扉を開けて教会に入る。
『おお!』
振り返った人々から感嘆の声が漏れる。
パイプオルガンの音に合わせてバージンロードをしずしず歩いていく。
その先にはサンドリバーの王子、ギルフリードがいる。
真っ赤なスーツに真っ赤な髪…どういう神経構造しているのだろうか?
僕の方を見て微笑む。顔はいいとおもうけどね…
王子は膝をつくと僕の手にキスをした!
手袋ごしでも気持ち悪くてさぶいぼたちまくる!
王子は僕の手を取り、一緒に歩き始める。
そして、階段を上がり神父の前に二人で立つ。
僕はアナからは何も知らされて無く、リハーサルもなんもしてない。これからどうなるのだろうか?嫌な予感しかしない…
「汝、ギルフリード・サンドリバーは、病めるときも健やかなるときも生涯、妻、マリー・シドーを愛することをち…」
「誓います!」
王子、食いつきすぎだよ。神父さん言い切ってないから。頼むから、僕をそんなに愛さないでほしい…
む、そういえば、何も起きない。どうしよう!
自力でとんずらかますしかないのか?
迷惑料とかとられんじゃないのか?
サンドリバー、お金ないらしいし。
「汝、マリー・シドーは、病めるときも健やかなるときも生涯、夫、ギルフリード・サンドリバーを愛することを誓いますか?」
む、何て答えよう?
1、誓いませーん!と、言って逃げる!
2、誓いまーす!と、言って、熱烈なチューをしてサンドリバー王妃として、生涯平和に暮らす。子供は沢山できそうだ!
3、「ハウッ」とか言って倒れて死んだふりをする。多分、ギル王子が呪いを解くためとか言って、チューしてきそうな気がする。
4、誰か違う男、例えばアルスなどの名前を叫んで助けを求める!多分、奴なら来るだろう!その代わり、奴と結婚することになるだろう!
「誓いますか?」
むむ!神父さんが念押ししてくる。1番の返答で逃げるのが1番リスクがなさそうだ。
「誓い…」
バタン!
教会の扉が開く!
待ってましたー!
「ちょっと待ったー!」
聞いたことのある男の声がする?
「グラビティ・ゼロ!アクセル・テン!」
僕は現れた男に腰を抱かれて、お姫様抱っこされる。
「ギル王子!お前にマリーは渡さない!」
キラ・シドーが王子に向かって指をさす。
「マリーを賭けて勝負だ!今から一ヶ月後、ここで武闘大会を開き、その勝者がマリーを勝ち取る!最強の者にこそ聖女マリーはふさわしい!ドラゴンスレイヤーのギル王子!異論はないな!」
キラは流暢に言い放つ。
「面白そうだな!サンドリバーが最強だ!異論はない!その勝負、受けてやる!」
む、王子、棒読みだよ。
これがアナのシナリオか。
「では、マリーは頂いていくぞ、では一ヶ月後!」
キラは僕を抱いて飛ぶと教会の入り口を開けて大空に飛びたった。