第八話 サンドリバーにあるのは前進あるのみ
「全軍突撃!」
王子の声が響きわたる。サンドリバー騎士団には突撃以外のコマンドはないのであろうか?多分無いのだろう。
重騎士団は槍を持って突撃してドラゴンの尾や爪や吐いた火球で弾き飛ばされるが、しばらくするとまた突撃する。なんだこいつらタフすぎるだろ!
「おかしいよね。アナリシス!」
いつの間にか僕の隣に、カマ野郎サクラがいる。
「なんだコレ、やばすぎる!全員炎熱耐性と、オートヒール持ってる!」
サクラの目が見開かれる、口も緩く空いている。
いかん!
僕は超人を百人作ってしまったみたいだ…
どうも、気合入れすぎたらしい…
そういえば、炎をくらっても誰一人離脱してない!
突撃する、吹っ飛ばされるを延々と繰り返す。
しかし、赤竜の体を覆った鱗は固くて攻撃が通らない。徐々に地面に倒れ込む名誉ある落伍者が手始める。吹っ飛ばされた後動かない者もいる。さすがに限界なのだろう。
「グラビティ・ゼロ!」
僕は団長の重力をカットして団長はドラゴンに襲いかかるが、その尻尾でなぎ倒され遠くに吹き飛ばされる。
もうもはや動ける者は皆無だ!…
赤竜強すぎる…
「よくも我が臣民たちを!許せん!我こそは、サンドリバーの第一位王位継承者ギルフリード・サンドリバーだ!トカゲ野郎、我が街を蹂躙した咎、わが部下を傷つけた咎まとめて精算してもらう!」
王子がまた見栄をきりドラゴンに向かって駆け出す。
ドラゴンが口を開きブレスの体勢に入る!
「引かぬ!媚びぬ!顧みぬ!サンドリバーにあるのは、ただ、前進あるのみ!俺が潰えても貴様を倒す!」
その言葉に倒れていた全ての騎士が立ち上がり駆け出す。
ドラゴンがその顎を開け、炎が収束する!
「我が体焼け落ちても、その心は折れる事無し!」
王子は微塵もためらうことなく炎の中に突っ込む!
みるみる鎧は溶けおち、王子は槍を突き出すが炎に飲まれる!
他の全ての騎士もドラゴンに特攻をかける。
王子はむかつく奴だけど、馬鹿だけど、あいつをここで死なせたくはない!
けど、僕のいる所と王子のいる所にはかなりの隔たりがある。
あいつを癒せ!
届け!
届け!
届いてくれ!!!
「タッチヒール!飛べ!飛ぶんだ!飛んでくれ!!」
僕は残りの魔力全てを込めて右手を突き出す!
魔法はイメージだ!意思の強さは常識を覆す!
僕の手から白い光が放たれる!
大きな手の形をして!
飛んで行った光る巨大な手のひらが王子に吸い込まれる!
炭になりかけた王子に周りの炎が渦巻き、王子に吸い込まれる!
みるみる王子の体が蘇生し、その突き出した槍がドラゴンの口に突き刺さる!
「死にさらせ!このトカゲ野郎!!!」
王子が叫ぶ!
王子の手がドラゴンの口に吸い込まれる!
サンドリバー重騎士団全員がドラゴンに群がる。
槍がドラゴンの頭から生える!
王子の槍はドラゴンの口を貫通した!
ピクンとドラゴンは痙攣すると動かなくなった!
「やったぞ!ドラゴンを倒したジャー!!」
ギル王子は、槍を天に突き上げる!
「サンドリバー!万歳!」
団長が天をランスで突き叫ぶ!
『サンドリバー!万歳!』
全ての重騎士たちが立ち上がって叫ぶ。その声が辺り一面の空気を振るわせる。
『ギル王子!ギル王子!ギル王子!』
ギル王子コールが轟く。勝利を祝う熱狂的なコールはしばらく鳴り止まなかった!