第四話 鉄の盾重騎士団騎士団長
どれだけの時間がたったかわかんないけど、全員を全快させた。僕は血などにまみれドロドロだ。
いつの間にか炊き出しが始まっていて、熱い汁と飯が振る舞われてるのを、むくつけき男たちが貪っている。
僕は渡された椀をすすって人心地つく。
「やっと終わったか…」
落ち着いて当たり前見渡す。
ん、最初のまるハゲがいないような？
「あれ！入口にいたハゲたおっさんは？」
そばにいた若いマッチョに声をかける。
「団長ですか、団長は…」
若いマッチョは言いよどむ。
「こっちじゃよ！」
医者のじいさんに袖をひかれる。
じいさんに別室に連れていかれる。そこには顔の上に布をかけられて横たわる巨体の人物が…
「お父さん！お父さん！」
身なりのいい可愛らしい幼女が巨体にすがりついて泣いている。
「団長は腹を食いちぎられてた。それにもかかわらず部下から治療してくれと、最高の漢じゃった…」
じいさんはさめざめと泣き崩れる。
「じじい！また嘘つきやがったな！こいつが一番重症だったんだな！こいつはまだ死んでない！ここから出て行ってくれ！俺は諦めない！」
じいさんに退室してもらい、僕はしゃがんで少女に話す。
「お父さんは強いんだろ！こんくらいで死ぬ訳がない！治療するからまっててね！」
僕は手で幼女の涙をぬぐってやる。
「ハゲがかっこつけやがって、部下から癒せだと！それで自分がくたばってどうする！お前娘がいるんだろ！死ぬ事は許さん！帰ってこい！」
僕は全ての力を込める。今日は魔力を使い過ぎたけど、まだまだいける！
歯を食いしばり、残る力を全て絞りだす！
「オーバー・バースト・タッチヒール・マキシマム！」
僕は顔の布をとり、ハゲ頭に手を触れる。ひんやりつるつるしてる。不謹慎ながら触り心地がいい。
僕は自分の持ってる残りの全ての癒しの力を流し込む。白い光が溢れる。
ハゲ頭が光を反射して更に光る！
キタキタキタキタキタァーッ！
『死んでたまるか！』
『正義を守る最強の盾になりたい！』
『もっともっと強くなりたい！』
『髪の毛ほしい！』
『嫁ほしい！』
ハゲの願いが心に流れこんでくる。
よかった成功だ！
悪いが嫁は自分で探せ！
「む！私はなにを？死んだ妻に会ってたはずだが？」
かつてハゲ頭だった巨漢はがばりと体を起こす。
「お父さん！髪ふさふさ！」
幼女が騎士団長に抱きつく！
よきかなよきかな、僕は自然と涙ぐむ！
……けど、マッチョにロン毛は気持ち悪すぎる…
