第三話 壊滅した鉄の盾重騎士団
「タッチヒール!」
怪我が酷い者から治療することにして、医者のじいさんについて行った。僕が癒した青年の青白い顔に赤みがさす。
まだだ。まだ癒しが足りない!
「じいさん!傷を見せろ!」
包帯が解かれて縫合された傷口が現れる。傷は大きくまだ血が止まってない。出し惜しみはなしだ。
「タッチヒール・テン!」
血が染み出している傷口に手をあてて、増幅した回復魔法を流し込む。みるみる傷が消えていく。
「抜糸」
じいさんが糸を取る。そこに触れて癒して完成だ。青年の苦悶の表情が穏やかになる。
「次だ!じいさん!」
「おお、すごい癒しの魔法だ!あと何回使えるのじゃ?救える命には限りがあるじゃろう。家族がいる者から優先的に…」
「黙れ!じじい!口を閉ざして、さっさと死にそうな奴の所へ連れて行け!」
とりあえず爺さんをビンタで黙らせて、次へ行く!
「気の荒い嬢ちゃんだな!こいつらはもうだめじゃよ!癒しの奇跡も足りないし、火傷が酷すぎる!」
そこには、十数人の鎧を纏った男達が転がされていた。部分的には鎧を外されてるが、鎧が溶けてる箇所もあり、多分皮膚が貼り付いて剥がせないのだろう。ケロイド状の皮膚、炭化した手足を露出させてる者もいる。
とりあえず、じじいの尻を蹴る!
「じじい!さっき嘘つきやがったな!怪我が酷い奴の所へ連れて行けと言ったはずだ!こいつらよりやばい奴はもういないだろうな?」
「こりゃ痛いな!わしが怪我人になるわ!こいつらが1番重症じゃ、もう助けてやれないじゃろう…」
「それは、お前じゃなくて俺が決める!じじい、口じゃなくて手を動かせ!タッチヒール・アドバンスド」
僕は、一番近くの顔がケロイド状の男に触れる。水ぶくれが破裂するが気にせずゴイゴイいく!
じじいとその助手に鎧を剥がさせて、どんどん治してく。
しばらく後には全員全快させていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんと、素晴らしい!奇跡!これが聖女!!」
じじいが涙を流している。
「泣くのは後だ!どんどんいくぞ!」
僕はどんどん癒していく。初めは僕が重症者の所に行って癒していたが、騎士たちの復活者が気を効かせて、僕の所に患者を連れて来てくれるようになった。長蛇の列が出来てる。少しづつ軽傷になってきて話せる者も出始めたので、事の次第を聞きながら癒す。
聞いた話をまとめると、サンドリバーの街に巨大なレッドドラゴンが現れて襲いかかってきて、サンドリバー鉄の盾重騎士団は住民たちを身を挺して守ったそうだ。住民には軽傷の者しかださなかったという。騎士団長の働きもあり何とか撃退したけど、あえなく壊滅したそうだ。サンドリバー重騎士団の団員百人一人として背を向ける事無く、巨大な竜に立ち向かったそうだ。
馬鹿だ!
こいつらは馬鹿だ!
いい馬鹿だ!
最高にかっこいい馬鹿だ!
話を聞きながら、僕の涙腺が緩む。マリーは泣き上戸だ…癒す手に力が入る。
それにしてもマッチョばかりだな…ていうかマッチョしかいない…まぁ重騎士団だもんな…