第二話 傭兵王国サンドリバー
「初めからそうしとけばよかったんだ」
カマ野郎の体を触りたくはなかったけどタッチヒールでなおしてやり、僕はベッドに腰掛ける。
「で、なんだ?頭をあげろ。ここは何処だ?あと、用件を言え場合によっては力になってやらんこともない」
サクラを見下ろして口を開く。
「ここは、サンドリバーだ。頼む助けてくれ!」
サクラは深々と頭を下げる。
「サンドリバー?どこそれ?」
「サンドリバーはギル王子と私の生国で砂漠に点在するオアシスをまとめた国だ。聖都ガンダーフから遙か西にある」
「遙か西…」
みんな心配してるだろうな…僕は考えながら足を組む、サクラが足の間チラ見した。
「パンツ見えた?」
「少し…」
顔が赤い?
「お前、ホモじゃないのか?何照れてんだ?」
「見くびるな!私はホモじゃない!ただ王子が好きなだけだ…」
サクラが顔を真っ赤にして抗議する。
「お前な。それを巷ではホモセクシャルって言うんだ。悪い事ではない。応援してやる!」
はた迷惑な王子と結婚すればいいと思う。見た目だけなら、美男美女だしな!
「どうも私はお前の事を誤解してたようだ。そんな事言われたのは初めてだ。見ればわかる。来てくれ」
パッと顔が華やぐ。まじこいつかわいいな!
女の子だったら惚れてたぞ!
ん、今は僕は女の子だから問題ないのか?
危ない、危ない!
いや、僕は男だ。
男の娘はノーサンキューだ!
部屋を出たサクラについて行く。奴は走るが余り速くない。どんくさいな。まだるっこしい。蹴りくれてやりたくなる。
「グラビティ・ゼロ!急いでるんだろ!ナビれ!」
僕はサクラをお姫様抱っこして走る。こっちの方がまだ速い。
「キャッ!あたってるよ!むね!むね!」
サクラは真っ赤になってジタバタする。こいつ男のくせに柔らかくていい匂いがしやがる。なんかムカつく。
「男がキャッて言うなや!乳のあたってるくらいでガタガタぬかすなや!ガキか!」
「離して!離してくれ!」
ギャーギャーうるさいので、軽くチョーパンかまして黙ってナビするだけの生き物にしてやった。
「牛女、ここだ…」
「牛女言うなや!このカマ野郎!」
サクラを雑に降ろし、ヤツが指差した扉を開く。
そこは学校の体育館位はある部屋で、床にひいてあるござみたいなのに、沢山の男達が横たえられている。男達は包帯にまみれ医者や看護師、僧侶などの回復職の人間が走り回っている。むっとする鉄と焦げた髪の毛のような臭い。傷病兵の治療所か?
近くの床に寝転がっているスキンヘッドの大男が上体を上げ口を開く。
「サクラ…この方がお前の言ってた聖女様か?聖女様、頼む。俺の部下達を癒してくれ!サンドリバー鉄の盾重騎士団、レッドドラゴンの前に壊滅した…」
力無く男はそう言うと、横になって目を閉じた。