第十四話 お家へ帰ろう
「ふぅ!疲れた!」
僕の口からついこぼれる。みんな影の中に入り、僕は一人ぼっちだ。
地獄を後にして、汚れたままだけど、服を着る。ぬめぬめして気持ち悪い。そこはかとなく腹が立つ!
モモさんの実家の門をくぐり、僕は気づく。道わかんねー、
「誰か!道案内して、わかんない!」
影に問いかける。
が、誰も出てこない。
しばらく待つ。
「しょうがないですね。僕が案内します」
影のなかからウニが出てくる。そういえばこういう奴いたな、完全に忘れてた。さすが隠密。
「お前じゃ役不足だ!シェィドを呼べ!」
「道案内に役不足もなんもないでしょ」
シェィドが顔をだすが、口調からサリーと思われる。
「いや!役不足だな!こんなジャリと一緒に歩いても楽しくもなんともない!こいつの話はつまらんし!」
「はいはい、わかったわ。寂しいんでしょ。素直にいいなさい!」
「寂しい!特に手が!」
僕は即答する。歩くときは誰かと手を繋がないと落ち着かない体質になってしまった!
「もう、甘えん坊さんなんだから。マリーちゃんイカ臭いわよ」
サリーがきゅっと手を握る。
「本当ですよ!しょうがないですね、イカ臭いのは我慢します!」
ウニも僕の手を生意気にも握る。
右手にウニ。左手にサリーの手を握り僕たちは帰路につく。ダブルホールドハンズはやはり落ち着く。牛男のゴツイ手が懐かしい。牛男どうしてるかな?後でイカに聞こう。
僕たちは夜道を歩く。正直眠い…
「マリーちゃんは、うちで、あたしが洗ってあげる。シェィドが準備してるから!」
サリーがきゅっと僕の手を握って見てくる。今のサリーはシェイドの中にいる状態で、黒い肌に緑の髪だ。これはこれで、昔のギャルみたいだけどかわいい!
モモさんの学園の部屋の前についた。
「モモさんの家の前についたよ」
影にむかって言う。
「あ、みんなサリーかシェイドがいないと。シェイドの部屋から出れないよ。ちよっと行ってくるわ」
サリーが僕の影にずぶずぶ沈んでいく。
「おい、ウニ、お前シェイドの部屋歴が一番長いと思われるが、いまの本当か?出れないのか?」
「そうですね!多分かなりの破壊力があれば壁を壊せるかもしれないですけど、僕では無理でした」
ウニで無理ということは、ほぼ無理ということではないだろうか?こいつ以外に強いし!
「あー、やっと綺麗になれる!ただいま」
モモさんが影からでてくる。バスタオル一丁なので、胸の谷間が素晴らしい!
イカ臭いけど…
「マリーちゃんどこみてんのよ!あまりジロジロ見られると恥ずかしいじゃない」
今日一日でモモさんとの距離が縮んだ気がする。テストのあとデートで、モモさんが暴走して、お風呂場から雪の中に放り込まれてやっと帰ってきた。なんて波乱な一日だ!
「梯子下ろして来たから、呼べば皆出てくるわ」
サリーが影から出てくる。
「サリー、モモさんこれからどうする?」
僕は二人に問いかける。モモさんの方は余り見ないようにする。刺激的すぎる。
「ちなみに、サリー、サリーが訳わかんないんだけど?シェイド?シェイドの部屋?」
モモさんがサリーを見て首をかしげる。
「説明まだだったわね、シェイドはサリーの独立意思のある分身で、影の中に自分の部屋をもってて潜り込む能力を持ってるわ、あたしとは意思の疎通、意思の交換ができて、今はシェイドの体にサリーがいる状態よ!」
的確な説明だと思うが、それでもモモさんは首をかしげている。
「ちんぷんかんぷんだわ!」
モモさんから、ちんぷんかんぷん出ました!きょうびあんま聞かない言葉だなぁ!
「サリー、戻るか?」
サリーの部屋の方から、サリーの中に入ったシェイドが来た。
「これで元通りよ」
サリーが言う。サリーの中はサリーに戻ったのだろう。
「うう、訳がわかんない?」
モモさんが頭を抱える。僕もこんがらがるよな。
「ちんぷんかんぷんデスカァ?」
モモさんを煽る。
「はい!ちんぷんかんぷんですわ」
おお、返された。
サリーが不審そうに僕らを見て口を開く。
「では、イカ君とマリーちゃんは、うちで綺麗にするから、モモ姉妹はモモの家で入浴ということでいいかなー?終わったら、うちで軽く擦り合わせを兼ねたミーティングしましょう」
サリーが僕の手をきゅっと握る。モモさんがそれをじっと見る。モモさんも僕のもう片方の手をギュッと握る。少し痛い。
サリーとモモさんがしばらく見つめ合う。サリーが肯く。
「わかったわ。パーティー変更、うちにマリーちゃんとモモ。モモの家に先生とロロとイカ君ね」
モモさんが満面の笑みで頷く。
「モモ。今の所はマリーちゃんの正妻はあたしよ!そう簡単には譲らないから覚悟するのよ!」
「了解。頑張るわ!」
二人は空いてる方の手でコツンと拳をぶつける。
二人は何を理解しあっているのだろう?
正妻もなんも僕は女の子だっつーの!
影から皆出てきて、僕らは分かれる。僕はサリーとモモさんに両手を握られて連れてかれる。
「シェイドの分の手がない!」
シェイドは僕の両足を握り持ち上げる。僕は三人に運ばれる獲物みたいなポーズで運ばれていった。何なんだよ!
全く!
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