第十一話 混沌の風呂に揺蕩いしイカの王
「クラーケン!」
先生の叫び声が聞こえる。クラーケンとは海に生息すると言う、伝説の巨大なイカの魔物だ。あいつはそんな大層なものじゃないと思う。
ザザーン!
浴槽から大量にお湯が溢れ、その中から巨大なイカが姿を現す。母さん…よりにもよって最悪な奴を…女子しかいない所にイカはいかんだろ…臭いし!
僕はたやすく触手に巻き取られ、ロロも巻き取られてる。触手にからめられて粘液まみれ、正直ひどい絵づらだ…
イカの触手は、さらに金騎士たちの群がってるモモさんの方へ伸びる。金騎士たちは素早く反応して剣で触手を切り捨てるが、剣は粘液まみれになって、すぐに全く斬れなくなる。斬られた所からすぐに触手が再生するが、金騎士たちの奮戦で今は硬直状態と化している。
チャンス!
これは勝ったな。
「タッチヒール・マキシマム!」
僕は触れてる触手にタッチヒールをごいごい流し込む。イカの触手は気持ち悪い位に再生し、金騎士を絡めとってモモさんから引き剥がしていく。
そして、最後に残ったぐったりとしたモモさんを捕まえる。鎧がゴンゴン落ちていく。
危なかった、あと少しでモモさんは金騎士になますにされる所だった。
モモさんは、バスタオルに黒兜というなんとも言えない格好だ。
先生を見ると、触手を懸命にかわしている。その周りではうにょうにょと金騎士たちが触手に絡め取られてもがいている。
「しまった!」
頑張ってた先生もついには触手に絡め取られた。
キィーーーン!
耳鳴りがして、少しクラッとする。
みんなでイカの触手に絡め取られて風呂場エリアに戻った所で、ちょうど辺りの景色が変わりはじめた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「帰ってこれたのか?」
最初に口を開いたのは僕だった。見渡すと、四方は木の壁で雪は降ってない。
大きな浴槽の半分位はある巨大なイカが、青いショートカットのロロと、黒兜のモモさんを触手で絡め取ってる。二人ともぐったりしている。
白い鎧の先生は、触手に絡め取られてもがいている。
浴槽から幾つもの触手がでてるが、壁の所で断ち切られてて、粘液をこぼしながら再生している。金騎士たちはうまくエリア外に留める事が出来たみたいだ。
「アンドレス!」
先生の声が聞こえる。目を向けると、鎧が消えて触手から抜け出したバスタオル一丁の先生が黒い剣を正眼に構えている。
「化け物さん!みんなを離すのよ!千人剣千人斬り!」
先生が無数に増えて、イカの触手を切り落とす。この人なに同士うちやってんだ?
ドボン!
僕はお風呂に投げ出される。ヌルヌルする触手を外し顔をだすと、立ち上がったモモさんが目に入る。
「駄目だ!モモ!」
僕は叫ぶが、モモさんは構える。全身粘液まみれだ、兜にも入って聞こえてないのでは!
「くたばれ化け物!巨人の足!」
イカの上に岩で出来た巨大な足が現れ踏み潰す。水飛沫があがり、足は浴槽の底につかんばかりにイカを押しつぶして消える。
「プグューーーッ!」
イカが断末魔の叫び声を上げる!口?からドロッとした墨などををまき散らしのたうちまわる!
「みんな!こいつは仲間だ!イカ!死ぬな!」
僕はイカに駆け寄り、ぬるぬるは嫌だけど触って、残りの魔力を注ぎ込む。
「オーバー・バースト・タッチヒール・マキシマム!」
僕の心に誰かの声が聞こえる。イカだけにイカん!やり過ぎた!ヤリイカだ!
『ああ、なんて幸せなんだろう!お風呂で美少女たちに囲まれて俺の粘液をぶっかけまくって踏まれてる!我が一生一片の悔い無しーーーっ!』
「馬鹿か!悔い改めろ!幸せを感じるな!」
『ああ、マリー様だ、なんて素晴らしい胸だったんだろう!満足!』
「馬鹿!満足するな!死ぬな!もっと汚い欲望を垂れ流せ!」
もしかして、賢者タイムに入ってるのか?
「そうだ!イカ!好きな食べ物を考えろ!」
『イカたべたい!』
「共食いか!自分を食え!」
『じゃ美味しくなりたい!』
「自分を食べるなや!なんか願いはないんかよ、欲しい力とか!」
『んー、俺ってばそこそこ強いし、結構いけてるから、リア充で食べ食べだし、不自由してないしー』
「早く願え!殺すぞ!」
『解りました!飛びたい!空飛びたいかもです!』
「かもじゃねーだろ!しっかり願えコラァ!」
軽く頭を、小突きながら癒してやる。
『はい!飛びたい!私は空を飛びまくりたいです!』
イカの全身を暖かい光が包み込んだ。
みやびからのお願いです。
「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、
広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、
ブックマークの登録お願いします。
執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。