第二十話 聖女冒険者登録する
「来る所間違ってんじゃないの?ここは冒険者の登録所よ、いかがわしい店じゃないわ」
衝立で区切られたカウンターには、エルフのお姉さんがいた。
彼女はとっても綺麗で僕はどぎまぎしてしまう。こんな人ここにいただろうか?
「あ、あの、場違いな格好かもしれませんが、冒険者の新規登録に来ました」
「んー、新規登録?座れば!」
促されるまま椅子に座る。なんか、対応がよろしくないな、やさぐれている。目つきもよろしくない。その視線の先は僕の胸だ。ついお姉さんの胸をチラ見する。貧しい。巨乳ってこういう時にヘイトを稼げるのか…
「読んだら、サインしてー」
低い無気力な声と共に書類を無造作に投げる。
なんかこいつむかつくなぁー!
気をとりなおして、渡された書類を見ると、名前を書く欄がある。書いて渡す。
「マルゲリータ・シドー、16才。シドーって、あんた、兄弟いんのー?確かクラン『セイクリッド・マローダー』のエースもシドーって名字だったような?」
「はい…兄弟のようなものです…」
本人とは言えないしな。まあ、間違ってはいないはず。
エルフは、ごそごそと水晶球と木の認識票を出す。
「色々調べるから、これに触ってー!」
能力測定のオーブだ。クラス、スキルとだいたいの能力が測れる。
水晶球に触れると、部屋中に目も眩むほどの白い光がほとばしる!
ビシッ!
あ、やばっ!ひびが入った。
「何これ、きもっ!」
エルフのお姉さんは水晶球から離れた。
「あーあ、水晶球、壊しちゃったわね…聖都から替えがくるまで、新人登録出来ないわね。弁償はしなくてよいわ」
エルフのお姉さんは測定結果が反映されたタブレットを見てる。
「ステータスは、うっ、ププッ。猿並み。魔力だけは、ええっ!測定不能!!」
やべぇ…やっちまった…
母さんのお腹の中にいる時から、鍛えた魔力はまさにチートで、母さんがどっからか持ってきた、魔力セーブのロザリオで抑えている。
なのに、測定不能!どんだけなのか?
けど、他の能力猿並みはひどいっす…
「これは、スキルの測定結果よ」
裏返した紙をもらう。とりあえずポケットにしまう。スキル結果をプリントアウトしたものだ。スキルについては個人情報で本人と許可した人しか見てはいけない事になっている。
「あとー、クラスは…ゴクリッ!」
エルフのお姉さんは唾をのむ。
「聖女!レアクラス出ましたー!」
僕が聖女?確かに僕は清く正しいが複雑な気持ちだ。
気が付くと、いつの間にか僕の後ろに冒険者たちが立っていた。
「お嬢さん、うちのパーティーに入りませんか?」
「俺達と一緒にたたかわないか?」
「うちのパーティーは実績もあるぞ」
わらわら寄って来やがる。
バタン!
大きな音と共に扉が開く。
「マリー発見!」
アナだ!僕はエルフのお姉さんから冒険者認識票をもらうと、空いてる窓を目指して飛びあがる。
「グラビティ・ゼロ」
男性冒険者達の頭を飛び越える。いかん、僕はスカートだった。しかもえげつないパンツ。
「白いパンツまるみえ!」
「うわ、お尻まるだし!」
なんか嬉しそうな声が。女の子って大変なんだな。
僕はギルドの窓から飛び出した。