第二十二話 夢の記憶
「決着をつける!」
黒い巨大な竜が天空より舞い降り、地上に降り立ちその翼を閉じる。
「ウオォォォオン!」
天に向かって咆哮を上げると、その体が黒い霧になり一点に集まる。そこには漆黒の鎧に逆立った短い髪に鋭い顔つきの青年が立っていた。
「まだ、あるわ!あなたを倒す最後の方法が!」
青年の視線の先には、片膝をついた少女がいた。
エアプランツみたいな、ふわふわした緑の長い髪で、この世のものとは思えない、幼さの残った整った顔。大きな目の瞳の色は、ルビー、吸い込まれそうな透明感のある赤紫色だ。僕は何処かで彼女に会ってる!
少女は立ち上がり右手を宙にのばす。その先に光りが集まり、一輪の真っ赤な薔薇が現れる。
「さようなら!ハリケーン!」
少女は、青年を見つめる。
「ラ・オメデ・アル・ド・ファルメオン」
少女は目を瞑り歌うように呟く。
「世界の終わり…エンド・オブ・ザ・ワールド!」
ピィーーーーン!
弦楽器の最高音を弾いた様な音がする。
少女の手にした薔薇が白い粉になり、舞い散る。辺りの全てのものから光りがでて、少女の手に吸い込まれる。後には白い粉のみ残る。
「ロックバレーとサーレを飲み込んだ禁呪か!俺の全てを飲み込みきるかな!」
青年は膝を曲げ騎馬立ちに踏ん張る。
「さらばだ!ラファエル!カオス・ブレイズ!!」
青年は右手を突き出す。その手のひらから、黒い炎がほとばしる!
少女は柔らかく右手を前に出す。黒い炎はことごとくその手に吸い込まれていく。
少しだったのか、長い時間だったのか、僕はそれを眺めていた。
「止めて!二人とも!」
僕はその間に向かって走り出す。
二人の魔法は止められない。相手を消し去るまで。
使う!僕の全てを、魔力、命、魂、全てを爆発させる。
「オーバーバースト!」
僕のすべてを、ひとつの魔法に全てを込める。
「全魔法消去!進化して!!」
魔法を増幅して進化させる!
「魔法非干渉世界!」
僕は二人の間に飛び込む。僕を中心に柔らかい光りが広がり、二人の体を包み込む。二人の魔法を消し去れた。僕は崩れ落ちる。手の先、足の先から体が崩れ白い粉になっていく。
ポタ!ポタッ!
暖かいものが僕の顔に落ちてくる。
「どうして、なにしゃがるんだ!」
青年が涙で顔をくしゃくしゃにして、僕を抱きしめている。
「なんで、こんなことしたの…」
少女が僕をのぞきこんでる。端正な顔から、止まる事無く涙が溢れてる。良かった。
「二人には仲よくしてほしかったから!約束だよ!」
僕の意識は闇に消えていった…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕は目を覚ました。ここはサリーのベッドだ、右にはアナ、左にはサリーで窮屈だ。アナは腹を出して寝てる。相変わらず、無防備だ。こいつ昨日部家に戻ったはずじゃ?サリーは僕の左手を両手で握りしめて丸まってる。ギューしたくなっちまう!
身を起こして右の手のひらをみる。謎の魔方陣はまだ消えてない。あのオカマ野郎!
「ディスペル!」
試しに夢で使った魔法を使ってみる。ん、魔方陣が消えた!何だ?
よく思い出してみる。そう言えば、緑の髪の少女、ラファエル、僕に似ていたな。僕がもっと痩せたらあんな感じだろう。黒いドラゴンが変身した青年名前はハリケーン、ドラゴンなのだろうか、だっさい名前だな!ロックバレーとサーレを飲み込んだのサーレって迷宮都市だろうか?夢で見た魔法が使えるってどういう事だろうか?現実なのか?
今日から学校だ、暇な時に考えよう!あと、そのあとはモモさんとデートだな!まだ、魔力は変身出来る量足りて無さそうだ。
「朝だ!起きろ!」
僕はアナとサリーを起こした。