第十五話 苦しい言い訳
ドクン!
ドクン!ドクン!
やばい!
きた!
全身が熱くなる!
どうする!
僕はせめて、変身の瞬間は見られまいと、うずくまり、亀のように丸まる。
王子は攻撃してこない。
考えろ!
どうする?
僕は完全にマリーになってる。体全体が痛い!
シェイドと別行動していなければ逃げられたのに…
「おい!大丈夫か!早く立ち上がれ!」
王子の声がする。
僕はふらふら立ち上がる。服はだぼだぼで、シャツの胸はボタンが弾けて全開だ。胸は左手でブレザーを摑んで隠す。
「お前は…俺のエンジェル?」
ギル王子の杖を持つ手が緩む。状況に戸惑ってるみたいだ。
「変化の術だ!お前はこの姿に攻撃できるのか?」
僕は王子を指差す!
く、苦しい!
この言い訳通じるのか?
「天使だ!」
「めっちゃ可愛い!」
「うわ!胸でけぇ!」
ギャラリーから、感嘆の声が聞こえる。
キュイーーン!
不協和音が聞こえる。
「あー、テス、テス、オケ!」
サリーが手になんかもっている。
「説明させて頂きます!」
サリーがどこから持ってきたのか、拡声の魔道具をもって話し始める。
「ギルフリード王子と、私サリーは、そこの姿のナイスボディでとても可憐な天使のような女の子、マリーを巡って決闘する次第となりました!」
ん、なんか、やたらマリーを讃えてるな。、
『オオオオオーッ!』
ギャラリーがどよめく。
「私は決闘の代役でキラ・シドーさんを立てたのですが、そこのサクラさんの罠でキラさんは、魔法を封じられてしまいました。キラさんは最後の奥の手として、自らの姿をギル王子の意中の女性マリーちゃんに変化する事で、王子に二択を強いてます!」
サリーは少し間を置く、辺りが静まるのを待つ。
「ポリシーを曲げて、女性、しかも意中の女性に手を上げて勝利を摑むか?それとも、ポリシーに準じて勝負を降りるか?」
『オオオーッ!』
ギャラリーがどよめく。
「ギル王子!決断の時です!」
サリーは叫び、拡声魔道具を握った手を下ろす。サリー、アナウンス上手いな。それになんとか誤魔化せたのでは?
「ギル王子様!もうやめましょう。今日の所は引き分けと言うことで!」
ギャラリーにも届くよう、声を張って僕は言う。上目遣いで王子をじっと見つめる。自分の仕草に鳥肌がたちそうだ。けど、第三の選択肢、手打ちを出すタイミングは絶妙なはずだ。普通の人だったら飛びつくはず。
「その姿はまやかしなのだな!俺は!俺は!」
王子は杖を振り上げる。
「ギルフリードは、サンドリバーは、何者にも屈しない!」
王子は、僕に駆け寄る。そして杖を振り下ろす。
早い!
そしてマリーは弱すぎる!
スキルなしではかわせない!