第十八話 聖女帰還する
「むかつく奴らだったけど、すこしすっきりしたわね」
サリーが走りながら話しかけてくる。
「伯爵家は厄介だな、私達は誰も貴族ではないからな…」
アナも走りながら答える。珍しくまともな事言ってる。
「だから、放置しとけばよかっただろ。まじあいつらくずだからな」
僕はモモさんの背中で口を開く。強いて言うならモモさんが黒騎士スタイルなのが少し不満だ。
あの後部屋を出て町に戻る事になった。三人は日帰り予定で来るときも走ってきたそうだ。当然僕が追いつける訳なく、おんぶされてる次第だ。
30層にも中地下一層(地上と地下一層の間の階層)へのワープポータルがあるはずだけど、部屋を出たしあいつらを見たくないという事で、全員同意して20層のポータルを目指している。
20層には、落とした僕の鎧のパーツがあるはずだ。かさばるから多分運がよかったら放置されているはず。ちなみに兜と胴鎧は収納にしまってある。モモさんがバキバキにしたけど、まだ修理出来るはずだ。男にいつ戻れるかわからないけれど、大事な鎧なので失いたくはない。
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「あったーっ!」
つい、はしゃいでしまう。20層に僕の鎧のパーツは落ちていた。けど、ボコボコになってる。僕の頭にジェフの顔がよぎる。踏んだり叩いたりしたのだろう。僕の何がそんなに気に食わなかったのだろう?
「あの、う○こ野郎が!」
つい悪態が出てしまう。アナの影響か汚い言葉をはいてしまう。
「マリー、う○こしたいのか?せめて隠れてしてくれよ」
当然のようにアナがくらいついてくる。相変わらずアクセル全開だ。
「誰がこんなとこでするか、ばかっ!」
「それより、その鎧かなり大きいわよね、しかも男物よね?」
サリーが僕の鎧の破片をまじまじみてる。何て言おう。男から女になりましたって言っても信じてくれないだろう。
「まあ、理由はいつか話すよ」
「ふうん」
とりあえず、今はごまかすことにした。
僕たちはワープポータルを見つけて僕が最初に飛び込む。
「グラビティ・ゼロ」
転移しながら重力をカットして準備する。転移が終わった瞬間に疾走する。
ラッキー、丁度数組の冒険者が部屋に居る。その頭上を軽く跳躍して越える。これは普通の人は助走しても無理な動きだ。部屋を出て階段を駆け上がる。
「よっしゃー!」
やっと、僕は自由になった。