第二話 廃墟にて
空が明るくなる頃、僕たちは街に着いた。
サリーは冒険者認識標をもってなかったので、僕のしょぼい木の認識標をだすが、すんなりと通れた。
早朝なのに、なんとなく慌ただしい。
街を通り抜けゲートをくぐり、スラムエリアに着く。幾人もの冒険者とすれ違い、負傷してる者もみかける。スラムの果てに差し掛かると、更に冒険者が増え、果てになると壮絶な光景だった。おびただしい数の骨と腐った死体。
そばの冒険者に聞くと、ここで、アンデッドの恐ろしい数の集団と街の冒険者の死闘が繰り広げられたそうだ。
僕たちは、孤児院の方へ走る。その、高い建物が見えない。
孤児院があったと思われる所に着くが、そこには何も無かった。柵も、建物も、ベルハウスも何もない。ただの更地に幾つかのアンデッドの死骸が残ってるだけだ。
孤児院のあった所だけ、死骸は少なくその回りには、地を埋め尽くさんばかりに積み重なっていた。潰れたりちぎれたり、焼け焦げたり、すさまじい戦闘が繰り広げられたのだろう。
「何が…」
僕は、呆然と孤児院の跡に立ちすくむ。ようやく体は全快してる。
「マリーちゃん…」
サリーが呟く。
「遅かったですよ、マリー様!」
いつの間にか、少年が立っている。小柄ではしっこそうな目。海鮮ズの一人、忍者君ことウニだ。
「ウニ。ここで何があったんだ?」
「死王が攻めてきたんだよ」
「死王ってなんだ?」
「え、ねーちゃん、骸骨城の死王を知らないのかよ?」
それからはサリーが説明してくれた。聖都の北の僕たちの出会った町ガンデュームより北を流れる河、ガンダーフ河より北は、魔族、獣人、リザードマンなどの、人間以外の者が統治してたりする。余り知られてない未開の地で、その中の西の湿地帯に骸骨城はあるらしい。数多のアンデッドを統治する者がいて、その者が死王と呼ばれてるそうだ。
そういえば、牛男を召喚した黒マントが、勇者にこいと伝えろと言ったのも骸骨城だった。黒マントもアンデッドだったような気もする。より前には、アルスが倒したのもアンデッドだった。どうも、アンデッドが僕を狙ってるような?
「サリー、僕、アンデッドに何か恨み買う事したかな?」
「え、マリー、本気で言ってんのー?」
サリーがじと目で僕を見る。
「思いあたるふしがないや」
「マリー、あなたのクラスは?」
「聖女?」
ということは!
「あ、分かった。僕自身がアンデッドの天敵だったんだ!」
そういえば、いつの間にか、そばにあったアンデッドの残骸が少しづつ無くなってる。
「それで、ウニ、孤児院はどうなったんだ?」
「結論から言いますと、迷宮都市に避難したそうです」
「迷宮都市!迷宮都市ってまだあるの?」
サリーが食いついてくる。
「サリー、迷宮都市については少し置いといて、みんな無事なのか?」
僕は、ウニの肩を掴む。
「はい、皆様、無事ですよ。牛男様、リナ様、マグロとイカとタコと私で、がつがつアンデッドを倒しまくっていたのですが、なにぶん数が多すぎてですね、ほんの1時間前くらいに、マリー様のお母様が孤児院と木の家を移動させました。私は隠密行動に特化してますので、残る事になりました」
ウニが僕らの前で消えて、また現れる。
「お母様からの伝言です。みんな元気だから、しばらく隠れてるからなんとかしてね、だそうです」
なんか軽いなー…けど安心した。なんとかしないとね…