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第二十七話 絶対絶命から


「うわっ!気持ち悪っ!どんどん治りやがる!」


 どうも僕はサリーが磔られてた寝台に固定されてるみたいだ。目隠しされてるみたいで、何も見えない。肉の焦げる臭いがする。痛い。どうも火箸を押し当てられてるみたいだ。


「けど、こいつもいい体してやがるぜ。伯爵様がいたぶる前にいただいちまおうか?」


「やめとけ、やめとけ、こいつもどんな能力をもってるか解らない。前、ゲイツがドレインでくたばったの忘れたのか?」


 ゲイツさん、ありがとう、おかげさまで助かりました。


 痛みを忘れ集中して考える。僕は今裸で寝台に拘束されている。多分傷の治り具合からさっきから数時間経ってると思われる。僕は大丈夫だけど、サリーが心配だ。どうにかしないと出血多量で死んでしまうだろう。さすがにまだ殺されてはいないとは思う。今出来ることは、待つ事と、魔力を温存する事だ。僕はオートヒールをストップする。


「あれ、直らなくなったぞ。燃料切れか?」


 こいつら、覚えていろよ!


 バタン!


 扉の開く音だ。


「伯爵様!」


「どうだ、お前達、魔石は出来たか?」


 馬鹿王子の甲高い声が響く。


「それが、まったく駄目です!」


「そうか。一人は見回りに戻れ。他にも仲間がいるかもしれない」 


 一人の足跡が遠ざかる。


「お前。なんでこんなことしてるんだ?」


 僕は弱々しく語りかける。


「仕事だよ、ヤギの乳絞りと変わらない。お前がロザリオを持ってきてくれて助かったよ。私はロザリオのレプリカを持ってたんだが、壊れてしまってね」


「サリーになんで…あんなこと…したんだ…」


 僕は掠れ掠れ言う。


「なんでって、魔力を絞りとるためだよ。魔法使いは痛めつけると魔力をだすんだ。目を隠したほうがよく感じるのかよく絞れる。舌は切っとかないと餌を食わないからな。お前がマリーか?舌を切るまで、マリー、マリー、ピーピーうるさくてな」


「外道が…」


 こいつは本物だ救えない!


「けど、助かったよ、あいつのおかげで借金は無くなったし、これからは魔石を売った金で整える事が出来る」



「なんだ!外れか!魔力が全然でないではないか?」


 僕は片目を潰され、手足の腱を切られ、至る所に火傷してる。出来るだけビービー泣き叫んで、絶望してるふりをしてやった。今は痙攣して気を失ってるふりをしている。めっちゃ痛いし、本当に気を失いそうだけど、集中して、魔力を温存している。チャンスは来る筈だ!


 僕の首からロザリオが外される。


「この役たたずと、桃髪を交換しろ!」


「はい。伯爵様!」


 僕の拘束具が外されて、髪を掴まれ引きずられて行く。目隠しも取れた。まだ我慢だ!


 死んだふり!


死んだふり!


 僕を引きずってる小男は、一つの扉の前で止まり鍵束を取り出し開ける。


「ヒュー!ヒュー」


 中からは、掠れた呼吸音がする。


 勝った!


 完全勝利だ!


 ランタンに照らされた部屋の中央には、壊れた人形みたいに手足を変な方向に投げ出してうつ伏せのサリーが見える。小男は僕を引っ張ってその横に寝せる。ちょうどサリーがこちらを向く。


「好きだよサリー!」


 僕の言葉に、サリーは血の涙を流す。


 四度目は血の味!


「オーバーブースト・タッチヒール・マキシマム!」


 僕は体をずらし、サリーに唇を重ねる。僕の全ての存在を癒しの力に変えて流し込む。僕たちは白い光に包み込まれる。光の中、サリーが僕の首に手を回し僕の唇をさらに強く吸う。


「な、なんだ?」


 ゴッ!


 どうも小男はふっとばされたらしい。


 口づけのままサリーは起き上がり僕をだきしめる。


 ミケランジェロのピエタ像がキスしてるような体勢で僕らは抱きしめあった。僕の顔に暖かいものが触れる。サリーの涙だ。僕も涙が流れる。体のあちこちは激痛だけど幸せだ!


 光は収まり、ランタンの光が僕らを照らす。サリーは唇を離して僕の顔をじっと見つめる。


「マリー!ありがとう!」


 サリーは、また、僕の唇に口づけした。


 五度目は、しあわせの味…


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