第二十六話 悪夢の城
「申し訳ございませんが、本日は入城できません。明日また、お越し下さい!」
橋の門番にはじかれても、僕は途方にくれない。
まず、引っかかるのは、どうして馬鹿王子はロザリオを欲しがったのか?
吸魔のロザリオは放出された魔力を吸収する神器だ。僕のように強力な魔法をがんがん打ったり、僕みたいに魔力をだだもれさしたり、悪魔や魔神とかの魔力溢れる存在に付けないと、魔石はそうそう作れない。要は、僕とセットじゃないと、あまり儲けない。何に装備させるつもりなんだろう?
答えは1つしかない。サリーだ、彼女しかいない。彼女に装備させて、魔石製造するのでは?
彼女が幸せなら帰ろう。そうじゃなかったら連れて帰る!
僕は重力操作で飛び上がり、テラスに静かに着地する。
僕は音を立てないようにしながら、サリーを捜す事し始める。城内は明かりが少ないので隠密行動には格好だった。
馬鹿王子はすぐに見つかった。でっかいテーブルで一人で、飯を食ってた。肉メインでお金はかかってそうだったけど、くそまずそうだった。
あと穴蔵みたいな小部屋で四人ほどの執事などの使用人が食事してて、明かりがついてる所は全て探すがサリーはいない。
嫌な予感がする。
サリーが何処かに捉えられてたとしても、食事は運ぶだろうと思ってキッチンに行く。
そこでは、大きな鉄のすり鉢で何かをすりつぶしてる男がいた。見ると刻んだ野菜や挽き肉等を入れている。それを汚い取っ手のついたバケツに入れると、水をそれに混ぜた。あと漏斗をバケツに入れると、男は歩き始めた。右手にランタンを持って。
家畜の餌だろうか?僕はそいつについて行く。
気付いた事だけど、執事以外はとてもガラが悪い。ごつくて所々に傷跡がある奴ばかりだ。犯罪者にしか見えない。前を歩いている奴も同様で、小男だけど筋肉質で、明らかに堅気じゃない。歩きながら、思い出したかのようにときどき革袋をあおる。酒だろう。若干千鳥足気味だ。
男は通路を歩き階段を下るのを繰り返す。これは帰り道がわかんないな。ぼどなくして通路が石積みから岩を削ったものに変わる。道は突き当たり階段が見える。天井は低くしっとりひんやりしてくる。
そのあとを音を立てずついていくと階段は終わり広めの通路に出る。通路の左右には格子窓のついた鉄の扉があり、男はその内の一つに鍵を開け入る。物音を立てないように格子窓から覗く。
ゴボッ!ゴボッ!
粘っこい液体が湧いたような音が聞こえる。
中では、男がベッドに固定された人物の口に漏斗を刺して、バケツの液体を注いでいる。
暗くてよく見えないが、ベッドの人物は、大の字で固定されてるみたいで、服は着てない。大きな胸が音と共に揺れる。長い髪が流れている。
「そうか。美味いか美味いか。ええ乳しやがって!」
男は胸を触ろうとする。
ドゴン!
僕は扉を蹴り開け、男を殴り飛ばす。一撃で動かなくなる。
サリー、これがお前の求めた幸せなのか?
漏斗を取ると、サリーは目隠しをされていて、口から血を流している。
「いあ!いああおえ!ゴボッゴボッ!」
舌を切られてるのか?
首にロザリオをかけていて全裸だ。鉄の拘束具で、直接寝台に首、腰、両手、両足で固定されている。全身至る所に生々しい火傷のあとがあり、傍らには焼き台と火箸がある。
テーブルの上に聖杯があり、子供の拳位の大きさの魔石ができてる。そのテーブルに鍵束がありそれで拘束具を外せた。マントを出してサリーにかけるが、サリーはもがくだけだ。立ち上がれない。よく見ると、手足の腱が切られている。
「クソやろうが!」
怒りで頭がはち切れそうになる!
「サリー!」
「あ、あう…」
目かくしをはずすと、サリーは血の涙を流す。
僕はサリーを抱きしめる。自然と涙がこぼれる。
どうにかしないと!
僕は服を脱ぎしまうと、倒れてる男に触れる。
痛みにこらえながらマリーに変身する。
「タッチ…」
ザシュッ!
サリーを癒そうとするが、右肩に焼けるような痛みが…
右肩から斧が生えている。
肺まで達してるのか声が出せない!
「ボロ城だから警備はザルと思ったか!」
薄れ行く意識のなか後ろを見ると、ごつい男と馬鹿王子がいた…