第十六話 聖女達やりこめられる
「た、タイタン！」
ジェフが目を覚ます。
「キャアアアアアッ！」
イリアが叫びながら跳びおきる。けたたましい奴だ。
「何だこれは？夢じゃなかったのか？」
ヘルメは起きるなり、自分の胸を両手で幸せそうに揉んでいる。頭大丈夫か？
「タイタンは、お前らが倒したのか？」
ジェフがアナの前に立つ。アナをリーダーと思ったのか？そいつはお前にカンチョーしようとしてたアホの子だと教えてやりたい。
「そうだが？」
「強かったか？」
「いや、くそ雑魚だった」
「ほう、じゃ、何で倒した？何俺たちの獲物を横取りしてんだよ！」
ジェフが身をかがめ。アナの顔に顔が触れ合いそうになるくらいまで近づいて怒気を込めて凄む。なんで、この手の人間って凄むときにめっちゃ顔を近づけるのだろうか？口臭で威嚇するつもりなのか？
「ていっ！」
僕は気配を殺してアナの後ろに立ち、頭を押してやる。
ジェフはぎりぎりアナを避ける。
『なにしてやがる！』
アナとジェフがハモって僕を怒鳴る。以心伝心か？惜しいあと少しで二人はチューしたのに。
「獲物もなにも、あんた助けてって言ってたじゃない？」
サリーがいらだった口調で割り込んでくる。後ろでは腕を組んだ黒騎士モモさんが腕を組んでる。
「何言ってやがる。俺は『神様』に助けを求めたんだよ！おめーら神様なのか？」
「ガキの様な詭弁ね、あんた達はあたし達が助けなければ死んでた。傷も治してやったのよ。あたしたちが笑っているうちに消えなさい」
サリーはジェフを見てにっこり笑う。けど、目がギラギラしてる。猛獣の目だ。
アナ、サリー、黒騎士モモさんの三人と、『セイクリッド・マローダー』の三人が対峙する。
「オーッホッホッホッホッ！」
緊張を破ったのはイリア。右手の甲を口にあてて、わざとらしく哄笑をあげた。
「やーねー、野蛮人はすぐになんでも武力で解決しようとする。わたくし達はあなた方に一切全く微塵も助けを求めてないわ、あなた方が居なくてもタイタンごとき軽くひねり潰してやったわ。それを横からしゃしゃり出てきて勝手に倒して何いきってるのかしら？」
イリアは仁王立ちになり、腰に手をあてる。
「わたくしの名前はイリア・アンダーソン。父の名はトマス・アンダーソン伯爵よ！わたくしの言うことが全て、それに不服があるのでしたら、わたくしの父に抗議なさい。わたくしに逆らうと言うことは、伯爵家、ひいては聖王国に弓を引くこととわきまえなさい。わかったらさっさと消えるのよ下民どもが！」
イリアはまくしたてると、地面に唾を吐く。なんて品のない伯爵令嬢なのだろうか。
「それに、タイタンなんて雑魚なんだろ、おめーらだったら、またサクサク倒せるだろう。雑魚のドロップアイテムくらい俺たちに譲れや」
ジェフがアナの頭をペシペシ叩く。
「なぁ、サリーこいつらマリーが治療する前まで戻してやってもいいか？」
アナの顔が赤くなっている。爆発寸前だ。それにしてもこすい奴らだ。目当てはタイタンのトレジャーか。ファーストドロップはレアな物が確定だからな。
「今日の所は引き下がりましょう、今のあたし達では伯爵家は厄介過ぎるわ…行きましょう…」
悔しいけど、そうする他になにも思いつかない。伯爵家と関わらないようにするためには、ジェフ達三人を殺すしかない。けど、サリー達にはその意思はないと思う。
「ちょい待てや、俺たちを回復させた奴、俺たちのパーティーに参加させてやる。残れ」
ジェフが顔を歪めて僕たちを舐める様に見ていく。サリーとアナがつい僕を見る。
「おめーは残れ、おめでとう、今日からお前は『セイクリッド・マローダー』の一員だ」
ジェフが僕の肩を掴んだ。
