第五話 告白の露天風呂
「ベルはマリーの事、大好きだから……」
ベルは目を伏せて、そのあと僕の目をじっと見つめる。
「そっこー、子供作って、子供と一緒につつがなく暮らすかしら!」
やばい!
ベルは本気だ!
目がギラギラ光っている!
ベルも立ち上がって、僕の方を向く。
月明かりに照らされて、とてもとても綺麗だ…
タオルが胸から下を隠してはいるが、ぴったりとベルの体に貼り付いてそのボディラインがはっきりと解る。
思っていたよりも膨らんでいる胸、くびれた腰に、すっと伸びる足。
まだ、成長仕切っていない、思春期のころに特有の少し手足が長めな体型が、とても可愛らしい。
可憐だ!
もし、電気が消えていなかったら、色んな所が透けて見えてたかもしれない。
「なあ、リナはもし僕が男の子だったとしたらどうするかい?」
「えっと、そうですね、私は姉様のお陰で、こうしてここにいることができます。私も、その、姉様と子供作りたいです!」
リナはしどろもどろだ。いかん、こいつも本気だ!
もてすぎだろ!
マリー!
「………」
僕は言葉を発する事が出来ない。鼓動が早くなるのを感じる。超絶美少女二人と、タオル一枚で、温泉にはいってて、しかも両人から、子供作りたいと告白されている。
当然、今まで生きてきてこんな状況になったことはない。
ああ!
僕は幸せだ!
男の子だっら……
月だけが僕らを照らしている。水面に月が映ってゆらゆらしている。
静寂、本当の静寂………
僕たちはしばらく月を見ていた。
僕は男だと告白するべきだろう。
けど、ふんぎりがつかない。
女の子同士でいちゃいちゃしてる、この時間が幸せだから。
失いたくは無い。
けど、なんか騙してるようで胸がつかえる。
「もみもみは、しないから、その、せめて、手を繋ぎたいかしら!」
ベルが近づいてくる。今、男の子になるのはやばい気がする。
間違いなく間違いを犯しそうな気がする!
母さんそんなに孫が欲しいのか?
『母さんは、まだ、私、おばあちゃんにはなりたくないから!』
と、言ってたが、訳すると、出来るだけ早く孫がほしい!と、言うことだ。
母さんはスーパーあまのじゃくだから、結構思ってる事の正反対を言うことが多い。
めんどくせー!
女って!
「おいっ!ギルティ君!」
「ノット!ギルティ!」
セーフなのか!
逃げよう!
まだ僕は心の準備が!
「グラビティ・ゼロ!水上歩行の術!」
僕は自分の重力をコントロールする。
「悪い。僕、もうあがるわ。十分あったまったし!」
僕はお湯の上を走り始める。
「アディオス!」
「グラビティ・マックス!」
ん、母さんの声がしたような?
バシャン!!
「ガボボボボボボーッ!」
突然、お湯の中に引きずり込まれて、お湯をいっぱい飲み溺れそうになる。
『もうっ。潔く観念しなさい。男の子でしょ!家族間には隠し事はなしよ』
僕の頭の中に母さんの声が直接響く。
「大丈夫かしら!」
「大丈夫ですか?」
僕は、ベルとリナに助け起こされる。あーあ、やっちまったよ…
ドクン!ドクン!ドクン!
心臓が痛い!
この痛みには慣れない!
「ありがとう!」
僕は礼を言うと、痛みに耐えながら立ち上がり、前に進む。
どんどん体が大きくなり、胸が無くなっていく。
完全に男の子に戻り、僕は後ろを向く。
もう、逃げない。今更だけど。
「マリー?」
「マリー姉様?」
ベルもリナも目がまん丸だ!
可愛いな!
僕はタオルを腰にずらす。
「僕の名前は、キラ・シドー。今後ともよろしく」
『キャアアアアアアーーーッ!!』
ベルとリナの悲鳴が月夜を切り裂いた。