第四話 古の魔神
「アルス君、その石像の宝石に触れるんだ!」
先生がアルスにゆっくりと強く命令する。うかつだった、さっきの違和感に反応していれば。
「先生!それはなんなの?」
僕は疑問をぶつける。話好きな先生ならば、説明してくれるはず。
「傀儡魔神は死んでない。封印されたのだ。クロノスブラッドストーン!異世界の時の神の血と言われる呪いの石で、触れた者の時の流れを失わせる」
説明してくれたけど、これはいかんのでは?もしかして、中二じゃなくてがちなのでは?
「それじゃ、それにアルスが触ったら?」
僕は尋ねる。
「時の流れが止まり、石みたいになるだろう。そして、傀儡魔神は解放される!」
嬉しそうに先生は説明する。こいつもくずなのか…
「くっ!どうすればいいんだ!」
アルスが吐き捨てる。
「選択肢はないはずだが!勇者がこの子豚を見殺しにできるのか?お前は勇者なのだろう!勇者は石になってもなんとかなるんじゃないか?ハハハハハッ!」
先生は、嬉しそうに嗤う!
考えろ!どうすればいいか!
「ベルの事は気にしないでいいかしら!こいつをぶっ倒すのよ!」
ベルが叫ぶ!いかん!逆効果だ!アルスが決断してしまう!
「子豚!魔法を使うなよ!発動前にその首切り落とすからな!」
先生の押し当てた刃先から血が滲む。このままでは血抜きされてしまう。
「わかった!その子を解放しろよ!」
そう言うとアルスは手をのばした…
「ウアアアアアアッ!!」
アルスの口から叫び声がもれる。
触れた宝石から、目の眩むような赤い光が宝石から発せられる。宝石はゆっくり宙にうきアルスの胸元に貼り付く。アルスは直立不動になり、宝石の所から色彩を失っていく。そこには、一体の石像が立っていた。
逆に玉座の石像は胸の所から色彩を、取り戻していく。後ろに流れるヤギのような角、黒い肩口で切り揃えた髪、漆黒のローブの上から漆黒のマントを羽織っている。精悍な顔に引き締まった体、昔の彫刻のような少し濃いめな顔つきの青年だ。
玉座も本来の色を取り戻す。金色の彫刻が施された台座に赤いクッションがついている。
空気がビリビリしているような感覚に包まれる。多分、彼の底知れぬ魔力をそう感じているのだろう。
背中に氷を入れられたような冷たい悪寒がはしる。
やばい!こいつはやばい!何てものを復活させてしまったのだ。
逃げ出したいけど、体が動かない!恐怖ですくんでるのだろうか?
そいつが閉じていた目を開く。
「幾星霜たったのであろうか、私の宮殿が荒れ果ててしまっている」
彼は立ち上がると、辺りを見渡す。
「光あれ!」
彼の言葉で、明るくなる。通路の壁に一定間隔で光が灯り、昼間のように照らす。
「むっ!」
彼と僕は目が合う。
「ほう、綺麗なおなごだな、私に仕えろ!」
彼は、ニタリと肉食獣のような犬歯を見せて笑う。イケメンではあるが、悪いが僕は男だ!
「こ、ことわる!」
何とか声を絞り出す。
「美しい声だな!その声を悲鳴に変えてやろう!」
彼はマントを翻し、右手を上げる。
「待って下さい!貴方様を解放した者です。ぜひ、ぜひ、私めを配下に!」
先生はベルを突き飛ばして、飛び上がり土下座する。ジャンピング土下座。初めて見た。
突き飛ばされたベルは僕に駆け寄りロザリオをむしり取る。
「まあ、よいだろう。今の事を知りたいしな。城に戻る。付いてこい。お前らは生きてたら遊んでやろう。動け僕達!」
彼は数歩進む。床が光り魔方陣が現れる。そこに先生も飛び込む。
「ベル!今だ!」
僕は叫ぶ。
「了解かしら!合体魔法!グラトニーマキシマム!!」
ベルは僕の唇から手で魔力を吸う。もう片方の手から身の丈位はある光の柱が伸びて、彼と先生を包み込む。その光は二人に吸い込まれていく。
多分転移魔法で薄れ始めた二人が弾ける!どんどん膨れ、力士と言うより肉塊になりながら、二人は消え去った。
「天罰かしら!」
ベルは僕にサムズアップする。僕もそれに返す。
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