第三話 古の玉座
僕達は、通路を壁伝いに歩く。アルスは中腰で、即座に何事にも対応できるよう慎重にすすんでいく。
たるい!
退屈だ!
ベルの方のを見るともきゅもきゅ芋を食べてる。
「収納禁止っていったわよね!」
僕はベルに小声で話す。
「収納ちゃうかしら!魔法よ!魔法!」
食べるのを止めて応える。
「ん、どんな魔法?」
僕は尋ねる。
「蒸かし芋召喚!この世界のどこかで、いついかなるときでも、誰かが美味しい蒸かし芋を作ってるわ!それを召喚する魔法!」
ベルは早口でこたえる。そんなに芋、食べたいのか?
「お前、それならアンブロシアより、そっちがいいのじゃないのか?それに泥棒じゃないのか?」
ベルは一口芋を、食べて飲み込んでから応える。
「触媒がいるのよ!銅貨二枚!芋と交換する形よ!いつも使ってたら破産するかしら!」
まあ、泥棒ではないな!けど、芋蒸かしてたら銅貨に変わってたら驚くだろうな!
「ていうか、魔力よこすのかしら!」
ベルが手を繋いでくる。芋食った手で触れないでほしい。なんか粉っぽい。
「もう、魔力ないのか?その魔法もコスパ悪すぎだろ!冒険中は考えて使うように!」
僕は小声で注意する。こいつから目を離さないようにしよう。あと、今度魔法のレパートリーを確認する必要があるな!
「先生は、いつもどんなお仕事されてるのですか?」
僕は後ろの先生に話しかける。
「私は、普段は、歴史と遺跡の発掘とかしてるよ。お金にはならないから、学園で講師しながらね」
先生はゆっくり語る。うん、ナレーションだ!
しばらく、この国や世界について、先生の話が続いた。どうやら僕は押してはいけないスイッチを押してしまったらしい。好きな事を話すと止まらないってやつだ。なーんにも頭にはいってこない。ただただ相槌を打ち続ける。苦痛だ。
「行き止まりだ!」
アルス!ナイス!どうやら目的地に着いたらしい。
「ついてきてくれるかな!」
先生は、通路の中央へ歩き始める。僕らも後に続く。
「先生!慎重にいきましょうよ!」
アルスが呼びかけるが、スタスタ先に進む。
「ここが玉座だ」
3メートル位の大きな岩が立っていて、その回りをぼろぼろな石像が囲んでいる。ストーンサークルみたいだ。
「ここは、昔は贅を尽くした絢爛たる空間だったという。今は全て運び去られて、価値のない岩石を残すのみとなっている。昔の光いまいずこだな」
先生がやたら饒舌だ、そんな岩を見てなにが楽しいのだろう。
「アルス君、これを」
先生は、アルスに錆びた短剣を渡す。アルスはそれを受け取る。
「アルス君、中央の巨岩の前に立つんだ。他のみんなは下がってくれ!」
何をしたいのか解らず、僕達は言われた通りにする。
先生がベルの後ろに立ったのに、僕は少し違和感を覚えた。けど、何の危険もないだろうと思った。先生はもしかしたらぽっちゃりが好きなのかも。
ベルが光を強めて、巨岩の上に移動させる。便利だな。辺りが照らされる。巨岩の回りを石像が囲み、通路に沿って2列に延々と石像が並んでいる。まるで、巨岩を王として、兵士が並んでいるかのようだ。
「アルス君!その短剣を岩に突き立てるんだ!」
先生は、やさしく話す。
「こうか?」
アルスが巨岩に短剣を突き立てると、巨岩にそこからひびが入り、細かい粒子になって、地につくまでに消え去った。
後には、石の玉座に座った石像がのこった。胸の所に、赤黒い宝石がついている。
「鍵は本物だったのか!文献のとおりだ!」
そう言うと先生は、鞄から短剣を出し、ベルの首筋にあてた。
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