第一話 枯れた迷宮
「あら、知り合いだったの?話が早いわね。こちらのガルガンさんが、護衛の依頼をだしててあと二人程探してたのよ!」
モミが何故、親切心的なものを出してるのだろう?
「俺の名はアルス知ってるかもしれないが!将来勇者になる者だ!ガルガンさんの依頼を受けたが、俺は剣しか使えない。魔法を使える者と回復を使える仲間を探している!」
モミの目がキラキラいやギラギラしてる。こいつアルスを狙ってやがるな!
「アルスさん!この方の名前はモミといって、公衆の面前でパンツ!もがっ!!」
パンツ脱ぐのが趣味だと言おうとしたのを、モミに口を塞がれる。
「アルスさん、こちらが聖女のマリーさん。あと、魔法使いのベルちゃんよ。頼りないかもしれないけど、よろしくお願いします」
モミは満面の笑みでアルスに話しかける。なんかむかつく!モミのくせに!
僕はモミの袖をつかんで、陰に連れて行く。
「なにお前勝手に仕事受けてんだよ!」
「あんたねー、枯れた遺跡の検査の護衛で、小金貨一人二枚よ!聖都の学園がスポンサーで裏も取れてるから、危険もないわ!」
モミが力説する。
「それでお前、アルス狙ってんのか?」
「当然よ!背が高くてイケメン!まだ、駆け出しだけど、今のうちに唾つけとくのよ!出世した奴らは受付とかじゃ手が届かないから!」
モミがまくしたてる。なんか利用されてるような気もするが、まあお金はあっても困るものじゃないし。
「ベル、お前どーする?」
「暇だし、行ってもいいかしら」
僕はテンションは上がらないけれど、依頼を受けることにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「光よ!」
ベルの魔法が階段を照らす。草原の中にかなりの広さの下に続く階段が口を開けている。
僕達が今いるのは、『傀儡魔神の宮殿』と言われる遺跡だ。数百年前に人類と戦った魔神の拠点だったと言われている。傀儡魔神とは、ゴーレム、ガーゴイルなどの魔法生物を使役する魔神で、とある英雄に倒されるか封じられるかしたらしい。と、ガルガンさんが言っていた。中は調べ尽くされてなにもないらしいけど、学園の依頼で探索に来たそうだ。
「私は戦闘能力は皆無だから、期待しないで欲しい。目的は最奥にある石像の確認なので、そこまで連れていってくれ」
隊列はアルス、僕、ベル、ガルガンさんの順番で進む。ベルの光の魔法は移動自由だそうなので、アルスの少し前位に浮遊させている。
遺跡の中は幅広い通路で、所々に風化した巨大な石像がある。
ガサガサッ!
前方で何か音がする。アルスが立ち止まり、剣を抜き構える。所々欠けた片手剣だ。あとの装備は、多分硬い皮の部分鎧。肩当て胸当て手甲と脚絆だ。
「何かいる。俺にまかせろ!」
「ギジギジッ!」
闇の中から、大きな蜘蛛が現れる。足の長さもいれて、幅が大人の身長位ある。
「ジャイアントスパイダーだ!俺から距離をとれ!」
言われた通りに、数歩下がる。
蜘蛛は、少しづつ間合いを詰める。先ほどの音は、奴の口の咬合音だ。口を動かしながらアルスに近づく。軽く飛び、二本の足を振り上げ、アルスに襲いかかる。
「アガッ!」
一本の足は、剣で流せたが、もう一方が、アルスの胸当てを強打する。たたらを踏んで、数歩下がる。
「やるじゃないか!」
アルスは、剣を再び構える。
「やるじゃないかじゃないわよ!お前、ざ、モグッ!」
僕はベルの口を塞ぐ。そして小声で話す。
「ベル、お前、雑魚って言おうとしただろう。わかっちゃないな!お前が知ってる連中は企画外!いわば変態だ。これが普通なんだよ!
僕達は、駆け出しの冒険者で、初めての探索依頼、このシチュエーションを楽しもうではないか。やばくなるまで、強力な魔法は禁止!」
僕は早口でベルに耳打つ。長い耳がピクピクするので、はむはむしたいのを我慢する。
「わかったのかしら!」
アルスは蜘蛛と一進一退の攻防を繰り返す。蜘蛛の足を捌く、斬りつける。鎧で受ける、斬りつける。アルスの斬撃は硬い音を立て弾かれているが、少しづつ蜘蛛の前足にダメージを与えている。
バキュ!!
蜘蛛の一本の足が折れる!
「行くのよ!アルス!」
ベルが大声を上げる!楽しんでくれてるみたいだ。
「任せろ!ちんちくりん!」
アルスは叫ぶと低い位置から蜘蛛に剣を突き刺す!柔らかい腹に刺さり、なんかきったねー液体をまき散らす。アルスは飛び退り蜘蛛に向かって構える。蜘蛛の動きは少しづつ小さくなり、動かなくなる。
「まあ、こんなものだ!」
アルスがどやる。少しむかつく!雑魚のくせに!
「おお!さすがですな。一人で倒すとは。荷物になるので、素材は帰りに剥ぎ取りましょう!」
「わかった!」
アルスは応えると。床に置いたザックから布を取り出すと剣を拭い、小さな壺を出し油を塗る。
そして歩き出す。僕らはついて行く。