俺、特殊能力がない代わりに攻撃力がめっちゃ高いみたいなタイプのモンスターなんだけど魔王軍でやっていけるか不安です...。
「お、お前が新人か」
鳥の魔物は、その手に持っている俺の履歴書俺を見比べながらそう言う。俺は石でできた体を動かして「はい!」とだけ言う。
俺は石できた、いわばゴーレムのような感じのモンスターだ。
今、俺は魔王軍のところにいる。石造りの広い内装に9本ほどの柱が立っている。左右の端には赤い宝箱がおいてある。ここにいる目的はもちろん、勇者の討伐だ。そのためにここにいる。
「よ、よろしくお願いしまっス!」
俺は、ゴーレムなだけに石のようなガッチガチのお辞儀をみせる。え、うまくない?
その鳥の先輩は頭だけはカラスのような見た目であとは筋肉むきむきの人間のような体。そして背中には大きな黒い羽が生えている。
「えーっと君、何ができるの?」
「え?あー...えーっと...」
俺は少し口ごもる。俺は、先輩の鳥の魔物は不思議そうにこっちを見ている。
「特に、使える技はありません」
「え?え?」
俺は正直気答える。そう、何の特技がないのだ。特技というのはRPGとかのモンスターが使えるプレイヤーが厄介に思えるモノだ。
例えばそうだな...眠りにするとか、毒にするとか状態異常はもちろん、能力値を下げたり、ゲームによっては呪いやサビなどで武器を弱体化などなど
「絵?君何もないの?状態異常とか、能力下げとか、そういうのは?」
「ないです」
そう、俺はそう類のものは一切ないのだ。だがそう言うもののない。
鳥の先輩は視線を再び履歴書に向ける。そこにはもちろん俺が言ったような事と同じようなことが書いてあるはずだ。『使える技はない』と。
「はい、自分には他にはない攻撃力と防御力があります」
「攻撃力と...防御力?」
RPGとかにたまにいる、厄介な状態異常などの能力などを一切しない、ただ通常攻撃だけなのだ。だがその分、攻撃力も防御力も他のものより抜きん出て高く、倒されにくく強烈な攻撃を繰り出せるのだ。
「それじゃあ、とりあえずどんなものか見たいから、試しに戦ってもいい?」
「はい!」
俺のいいところを見せるチャンスだ。俺は向かってくる鳥の先輩の拳の攻撃は俺の防御力の前ではさほどダメージにはならない。俺も拳で鳥の先輩の反撃をする。凄まじい音とともに鳥の先輩は吹っ飛ばされる。
先程も言った通り。その辺のモンスターなんかよりかは攻撃力が桁違いにある。能力を使えない分、肉弾戦なら負ける気がしない。
「なるほど、君の言った通り攻撃力と防御力はなかなかのものだね」
「はい!」
俺はその言葉に大きく返事をする。認めてもらえた。やっと...。
「まあ君一人だとあんまり意味はないんだけど、まあいいや。見せてあげる」
そういうと鳥の先輩はてから火の玉を出すと地面に打つ。地面に当たった火は燃え盛り広範囲へと広がって行く。
「なんだこれ...すごい!」
「全体の火の魔法さ。勇者が仲間引き連れても全体攻撃ができるってわけさ」
「すごい..!こんなの使えたらなあ...」
「君はこんなの無くても十分だと思えるけどね?」
「本当ですか!?」
褒めてもらえた。初めて褒めてもらえた。今までそんなことはなかったのに...。
「早速勇者が来たね。やってみるかい?」
「はい!!」
俺は元気よく返事をするとその部屋を出た。草むらをかき分け橋を渡り、勇者の元へとたどり着いた。向こうはこのへんの敵を倒し尽くしたせいで油断しているようだ。僧侶の女と武闘家の男を連れている。
「うごああああああ!!」
俺は拳を一振り。その一撃は相手のHPを大きく減らすものだった。
その異常さに気づいたのか。回復をしようとするが時すでに遅く。もう一撃で見事に回復をしようとしていた僧侶をやっつけた。そのまま勇者も武闘家も倒し。意気揚々と戻っていった。
「すごいねえ!」
「えへへ、そうですか?」
戻るや否や鳥の先輩の感嘆は、声を上げる。周りの一つ目の魔物やヤギのような魔物もこちらを見ている。まるで有名人になった気分だ。
「君、そんなすごいんだねえ」
「いえ、これでも無能扱いでしたから」
そう、俺はずっと無能と言われていた。アカデミーでほかの魔物は眠りや火の呪文、状態異常などの技を使える中で俺は何も使えない。もちろんそう言うやつ相手に肉弾戦で戦うわけもなくあっさりやられてしまう。
RPGをやってる人なら、こういう攻撃力のある物理攻撃オンリーの敵は状態異常などを使って倒した経験あるだろう??
「お前ダセーな!!」
そう言われ続けた。そう言われてずっと諦め掛けていた。自分は取り柄がないのだと。だが、今こうやって輝いている。自分にも取り柄があったのだ。
「いやさすがだよ」
「あっ..ハイ!!」
嬉しさにそう応える。初めてとも言っていい、その瞬間は身にしみるものがあった。
「えーっと、君が新人の...」
「はい!」
新人研修中の俺は新人のその大きな体の獣を見ながら、履歴書に目を通す。
あれからやや有名になり、この「新人を育成する研修」と言うものを任されるようにまでなった。
履歴書に書かれたステータスをみる。驚くことに、俺と同じぐらいの攻撃力に守備力もある。きっと同じ道を歩んできたのだろう。俺は優しくこう問いかける
「君、何かできるの?」
「えーっと、相手の動きを止めたり、眠らせたりできます」
「えっ?」
俺は驚いた。こんな攻撃力があるのにさまざまなことができるなんて、俺より強い、ゲームの用語でいえばいわば完全上位互換というやつじゃないか。そんな完全上位互換のその新人を見ながら俺はこうつぶやいた。
「世の中は理不尽だなあ...」
風来のシレンにエリガンっていうまさにこのタイプのモンスターがいて、高いHP攻撃力で嫌いでした