第8話「人を癒す力」
「私自身の、魔力…」
「そう。あなたの使えるであろう魔法と属性よ。」
「や、やっぱり私にも魔法が使えるんですね!?」
「努力すれば、ね。」
努力すれば、魔法を使うことが出来る。
まるで夢のようだ。
一度は考える、もしも魔法を使えたらという妄想。それらがついに叶ってしまう。
一体どんな魔法を使えるのだろうか?ワクワクが止まらない。
「まず──残念だけど、攻撃系の魔法は使えないと考えた方がいいわ。出来て初級呪文くらいね。」
「えっ。」
「物体操作系や移動系も難しいでしょうね。強化系は辛うじて使えそう、ってくらい。」
「えぇ………」
なんという事だ。やりたかった事のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。
つまり、ほとんど何も出来ないのでは?という思考に辿り着いてしまい、酷く落ち込んだ。
そんな私の様子を見て、リリアは小さくため息をついた。
「こういった魔法が使えないのには理由があるわ。あなたの基礎魔力の属性よ。」
「はあ………」
ここまで何も出来ないという属性とは一体なんなのか。
逆に気になってリリアの言葉に耳を傾ける。
「それは、”命”。………正直、信じられないわ。この属性を持つ者なんて、世界中で数えるくらいしかいないのよ」
世界で数える程しかいない……相当凄い属性だったらしい。
とはいえ何も出来なければいくらレアでも意味が無い。
「その…命って、どんな魔法を使えるんですか…?」
「主な魔法は回復。傷を癒すことはもちろん、状態異常を治したり、極めれば呪いの浄化や病気を治すことだって可能よ。簡単に言えば、癒しの力…ってところかしら。」
そうか、回復魔法…攻撃系や補助系にばかり頭がいっていたが、よくよく考えれば回復魔法も代表的な魔法のうちに入るんだった。
ということは、自分はヒーラー…に値する、ということだろうか?
「基本、回復魔法は鍛えれば誰にでも扱えるものだけれど…極めるとなると困難になる。余程の才能を持っていないと不可能なの……例えば、あなたのように命の属性を持っていたりね。」
「回復魔法を、極める…」
回復魔法を極めるなんて、あまり考えたことがなかった。
ゲームでも必須なスキルではあるものの、あくまでサポートがメインの魔法だ。
それを極めて、一体どんな利益を得られるのだろうか?
「あまり想像が出来ない、って顔してるわね。例えば…通常の回復魔法が外傷を癒す程度のものだとしたら、あなたのそれは生命力そのものも回復させる事が出来る。つまりは、傷を負ったことをほぼ無かったことにできる、ってわけ。」
つまりは通常なら時間をかけないと回復不能な領域まで瞬時に回復できる…という事なのだろうか?
なんとなく、分かったような、分からないような…実感が湧かないというのが正直なところである。
その回復魔法を使っていないからなのだろうけども。
「それじゃあ、とりあえず実践してみましょうか。その方が感覚も掴みやすいでしょ。」
そう言うと、リリアはおもむろにナイフを抜き取ると、自らの腕にあてがい…
「えっ、ちょっ!?」
一切の躊躇いも無く、切り裂いた。
さらに言えばかなり深く切っている。パックリと開いた傷口からはボタボタと鮮血が流れ落ち、床に跡を作る。
それを見たミカイアがやや顔をしかめたのが見えた気がしたが、見間違いということにして見なかった振りをした。
「じゃあ、はい。まずはここに手をかざして。」
「え、えっと、こう…?」
言われるがままに手をかざす。この後はどうすればいいのだろう、念じるとか…?
「で、そのまま…あら?」
そう思った途端、右手がほのかな光を放ち…
みるみるうちに傷が消えていく。数秒も経てばかなり深く切ったであろう傷は、跡すら残らず消え去った。
「な、治った…」
「なんだ、説明しなくても出来るじゃないの。やっぱり才能あるわね、あなた。」
「そ、そうですかね…えへへ…」
そんなに真っ直ぐ褒められると流石に照れてしまう…が、そんな雰囲気に割って入るようにミカイアがコホンと一つ咳払いをした。
「魔法が上手くいったのは喜ばしいことです…が。次は外でやって下さいね?」
先程の表情は見間違いではなかったようだ。
笑顔を浮かべているが、明らかに目が笑っていない。
確実に怒っている。
……いや、でもこれ、私は何も悪くないのでは?
そう思った通り、彼女の怒りの矛先は全てリリアに向けられているようだった。
「…悪かったって。後始末手伝うから…それでチャラに…」
「なりません。庭の整備を行ってくださるのでしたら、許しましょう。雑草を取り除くのは得意でしょう?」
「うへぇ、めんど…」
「それと、シオンさん。」
「は、はいぃっ!?」
急に声をかけられ、思わず声が裏返ってしまった。少しの恥ずかしさを抑えながら恐る恐る様子を伺えば、その顔から怒りは消え失せ、優しげなミカイアさんに戻っていた。
「今日は疲れたでしょう。2階の掃除は済ませてありますので、そちらでお休み下さい。」
「で、でも…良いんですか?」
「私が許可するわ。ここは元々私の持ってる家だし、それなら文句ないでしょ?」
「え、えっと…じゃあ、お言葉に甘えて…」
そう言って席を立ち、二階への階段に向かう。
部屋は複数あるようだが、とりあえず一番近い扉を開け、部屋に入る…
シオンが部屋を去った後。残された二人は会話に戻る。
「これから、どうするつもりですか?」
「そうね…まずは杖の調達と…ナーシャ様の元へ行くつもりよ。」
「ナーシャ様の元へ?それはどうして…」
「まず一つは彼女が命の属性を持っていること…そして、不死の呪いを受けた理由。ナーシャ様なら、何か知ってらっしゃるはずよ。」
「…そうですか……では、シオンさんが、元の世界に帰れる確率は…」
「ゼロ、でしょうね。不死の呪いを受けている以上…例え帰ることが可能であったとしても、辛い思いをするだけよ。」
「………。」
「残酷だけど、事実だから。事情が分かったら、旅にでも出すつもりよ。助けを求める人間なんて、数え切れないほどいるんだから。」
「…あなたは、行かないのですか?リリア。」
「気分次第ね。」
「もう…相変わらずなんですから…」
そんな会話をしつつ後始末を終えると、窓の外に目を移す。
空はすっかり暗くなり、星々が輝いていた。
◇─▫後書き▫─◇
──久々の投稿になり、大変申し訳ございません。
これからも、気まぐれで描いては気まぐれで投稿していきますので、よろしくお願いします。