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癒し手シオン  作者: ミル
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第6話「これからの事、自分の事」

「おかえりなさいリリア、帰ってきていたんですね。」


 床を拭いていた女性は立ち上がると、軽くスカートを整えてこちらへと向き直る。

 そして頭に着けていた三角巾を外すと軽く頭を下げた。


 「そちらの方はお客様でしょうか?このような姿で申し訳ありません。私はミカイア。リリアの友人であり、東門近くで花屋を営んでおります」


 茶色い髪を三つ編みにして結び、先程は三角巾で見えなかったが花の髪飾りを頭に着けている。

 細目なのだろうか、閉じられたようにも見える瞳は柔らかく弧を描き、優しげな笑みを浮かべている。


 いかにも”優しいお姉さん”といった雰囲気の女性だ。


 「え、えっと…」


 「この子はシオン・ヒイラギ。森の中で倒れていたのを拾ったのよ。」


 「そうですか…しかし、あなたが家にまで案内するなんて珍しい。少々お待ちくださいね、掃除もひと段落着いたのでお茶を入れてきます。」


 ミカイアはそう言うと、慣れた様子でピカピカに磨かれたキッチンへと向かう。



 暫し待つと、湯気の立ったコップが3つ、お盆に乗せられて運ばれてきた。

 お茶の良い匂いが湯気と共に運ばれ、ふわりと鼻腔をくすぐる。

 やはりこの世界独自の茶葉なのだろうか。独特な香りが混ざっているようにも感じた。

 透き通った黄緑のお茶を口に含む。身体中に温かさが染み渡っていくかのような、不思議な感覚を感じた。


 「それで…彼女はどういった方なのですか?あなたがここまでしてあげるなんて珍しい…」


 「それが…なんと言うかね。所謂”外の世界”から来た人間らしいのよ。しかも…」


 リリアは徐に私の右手を掴むと、手袋を外しその中を見せた。

 手の甲に浮かぶ模様。それを見た瞬間、ミカイアも目を見開いた。金色の瞳が私の手をじっと見つめている。


 「それは……不死の呪い…!?」


 「不死の呪い…?」


 聞きなれない何やら物騒な言葉を反芻し、首を傾げる。

 呪い、ということは呪われているのだろうか、自分は…!

 不安そうな私の様子を察してか、リリアが口を開き、解説を行ってくれた。


 「…不死の呪いというのはね、この世の理に逆らうような行為…例えば死の運命をねじ曲げるとか、自身の時間を停止するとか…そういったことを行った場合に蝕まれる不老不死の呪いのことよ。

 それらを行ってなくても、何らかの理由で体…命の時間に大きなズレが生じた場合にもこの呪いが現れるというわ。

 その名の通り体の時間が止まり、死ぬ事すらできなくなる。たとえ致命傷を負っても必ず蘇り、その方法は様々……といった感じね。当たり前だけど、世界にも片手で数える程しかいないわ。」


 「命の時間に、大きなズレ…?もしかして、私が外の世界から来たからじゃ…」


 「それもあるでしょうけど、ただ訪れただけではこの呪いに蝕まれることは無いわ、体が世界に適応するから。不可能だろうけど、行って帰ってきたり出来たなら或いはってところかしら。」


 行って、帰ってくる。

 けれど、この場合だと私は…………



 私は…………………?



 私は、どこで生まれたのだろう?



 「けどまずは教えなきゃいけないことが山ほどあるわ。………シオン?」


 「あ、は、はい!」


 「大丈夫?ボーっとしてたけど。話、ついてこれてる?」


 「な、なんとか…」


 苦笑いで返すしか無かった。

 今はとりあえず、変に考えすぎるのは良くないのかもしれない。

 彼女の話に集中しよう。まずはこの世界のことを知らなければならないのだから。


 「そう、ならいいのよ。」



 「呪いのことも話したし……他にも教えてあげるわ。」

 「この世界のことを、色々ね。」

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