第3話「それでも事態は進む」
「…じゃあ、色々説明しないといけないわね。とりあえず…」
彼女はすり潰していたものに水を入れて混ぜ、木で出来た容器に入れて私に差し出した。
「はい、これ飲んで。魔力の乱れを整えてくれるから…一気に飲み干すのよ。」
差し出された容器を覗いてみると、中の液体は深い緑色をしていた。
いかにも怪しい見た目をしている…飲むにはかなり勇気が必要になりそうだが………待たせ続けるのも悪いからと、彼女を信じ言われた通り一気に流し込む。
………
……………
「……〜〜〜!!!」
「そうね、かなり苦いでしょう。」
………苦い…!!
とてつもなく、苦い。
良薬口に苦しとも言うが、そのレベルを超えているようにも思えるほどの苦さ。
思わず吹き出しそうになるも気合いで抑え…勢いのままにどうにか飲み干す。
………体は楽になった…ような気もするが、嫌な苦さが口の中に残り続けている…
抗議の目で彼女を見ると、表情は固いものの満足気に頷いていた。
「よく出来ました。はい、これ口直し。」
次に差し出してきたのは別の容器に入った水と、黄色く透き通った色をした木の実のようなもの。
…口直しとは言われたが…未だに残り続ける味を飲まされたせいで、どうしても躊躇ってしまう。
「…あー、これは大丈夫よ。さっきのは悪かったから…言ったら飲まない人多いんだもの…」
「……う……………い、いただきます…」
意を決して木の実を口に放り込んだ。
………おいしい。
甘すぎず、かと言って変な苦みや渋みもない。噛んだ瞬間に爽やかな甘さと仄かな酸味が口いっぱいに広がる。
先程の苦さでさえも忘れてしまうほどの美味しさだ…!そのまま何個でも食べられてしまいそうである。
まぁ、渡されたのは1粒だけなのだが。
「気に入ってくれたようで何より…それはマナフルーツ。さっきのはそれの葉よ。」
「…え、同じものなんですか?」
「そうよ。美味しさを感じさせるような成分は全部実に集まってるから。その代わり、葉には純粋な魔力とその魔力を安定させて運ぶ成分だけが残ってる…それが苦味の元。…って、魔力については分かるかしら…」
魔力…ゲームではよく聞く要素ではあるが、同じようなものなのだろうか…
「………はぁ…そこら辺についても、詳しい事は後で印の事と一緒に説明するわ。とりあえず街に行きましょう、ずっと森の中っていうのも危険だから。」
もう立てるでしょ?と彼女は私に手を差し出した。
確かに、先程とは違って体が思う通りに動く。念の為差し出された手を取って立ち上がるが、歩くのも特に問題はなさそうだった。
「ありがとうございます、えっと………お名前は…?」
「あぁ…そういえばまだ名乗ってなかったわね。」
「私はリリア。短い間だとは思うけど、どうぞよろしく。」