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癒し手シオン  作者: ミル
3/9

第2話「状況の理解も出来ず」

 「まだあまり動かない方がいいわよ。魔力の乱れが酷いから、無理に動けばまた気絶するかもしれない。」


 …呆然とする私を他所に、彼女はしっぽをゆらゆらと揺らしながら手に持った包みを開け、中身をボウルに入れてすり潰し始めた。


 「あなた、名前は?どこから来たの。」


 「…えっ、あ、えっと…!」


 手は止めずに目線だけこちらに向けながら問いかけてくる。

 まだ頭が追いついていないが…答えずに機嫌を損ねてしまうのもまずいだろう。


 「ひ…柊紫音、です…東京から来ました…」


 混乱する頭を必死に動かし、どうにか質問に答える。

 だが…それを聞いた彼女はピタリと手を止め、怪訝そうな目で私を睨んだ。


 「……今、なんて…?」


 「えっ!?そ、その…」


 背筋が凍る感覚がして、冷や汗が頬を伝う。

 なにかおかしなことを言ってしまっただろうか…と思考をめぐらせ、とある事が思い浮かんだ。

 この幻想的な景色、明らかに偽物ではない尻尾の付いた女性…もしこれが、よくある"転生もの"のような話で…私が別の世界に転生してしまっていたとしたら…?

 聞いた事のない、存在しない場所から来たと言い出す不審者になりかねない。

 それもこの世界に東京が無かったら、だが…彼女の反応的に考えて存在はしていないだろう。


 「あっ、ち、違うんです!あのですね、えっとーな、なんだか記憶が混乱してるのかなーなんて…」


 慌てて誤魔化そうとするも、彼女の視線は変わらない。

 …それもそうだ、むしろ余計怪しくなった気もする。


 これ以上印象を下げるのはまずい、しかしどうすればいいのか…

 そう悩んでいる時、彼女が一つため息をついた。


 「何となく分かったわ…とりあえずもう一つ聞かせてちょうだい。」



 「あなた、もしかして外から来た人間?」


 「………へ?」


 予想外の質問に間抜けな声が漏れてしまった。

 外から…というのはどういう事だろう。

 まさか転生が認識されているとか…?


 「ここはごく稀に空間の歪みが起きて、外の別世界と一瞬だけ繋がることがあるのよ…その時運悪く何かが迷い込んでくる時もあるみたいでね。まぁ私も見たのは初めてだし、この話も知り合いから聞いただけだけど。」


 まさか本当の話だったとはね…などと呟きながら、彼女はまた何かをすりつぶす作業を再開した。

 つまり私は転生した訳ではなく、空間の歪み?に巻き込まれて迷い込んで来た…?

 もしかして帰る方法もあったりするのだろうか。


 …けれど本当にそれだけなのだとしたら、この髪の色と手の模様は何なのだろう。


 「…あの、じゃあ…ここに迷い込んだら髪の色が変わったり、印?みたいなのが出てきたりするんですか…?」


 「ん?そんな話は聞いてないけど…元々あったんじゃないの?」


 「い、いえ!私は本来黒い髪ですし…こんな模様もありませんでした…」


 もしかしたら何か知っているかもしれない…そう思い、彼女に手の模様を見せる。

 横目にそれを見た彼女はまたしても手を止め、模様を凝視する。

 その表情は驚きに満ちたものだった。


 「あなた、これ…嘘でしょ…!?」


 …そんなに凄いものなのだろうか、これは…

 彼女は私の手を取って、片手をその模様にかざした。

 すると、手の模様が黄緑色に変化し、淡い光を発した。

 数秒後、彼女が手を離すと同時に光は収まり、色もまた黒へと戻る。

 今のは一体…


 「…間違いない、本物だわ…あなた、これの事何も知らないのね?」


 「は、はい…気がついたらあって…」


 それを聞いた彼女は、一つため息をついた。

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