表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒し手シオン  作者: ミル
2/9

第1話「日常とは程遠い世界」

────────


 ───何かが聞こえる。


 これは、声?誰かの声だ。

 どこか懐かしく感じる、優しげな声。


 『─────。』


 何を言っているのかは分からない。


 うっすらと目を開けてみる。

 見えたのは、薄い緑。

 誰かが私を覗き込んでいる?

 ぼやけた視界の中で、黄色い瞳と目が合った気がした。


 『───。』


 また意識が遠のいていく。この子は誰?何を言ってるの?

 …何も分からない。

 目を開けているのも辛くなってきた。視界が黒く染まっていく。

 私は………



 ………………





 『待ってるよ。───シオン。』











 ………ぱちり。

 意識が覚醒し、目を開く。

 真っ先に目に入ったのは、いつもの見慣れた天井…などではなく。

 風に揺れ動く木々の葉と、その隙間から覗く青い空。


 …一体何が起きたのだろう?

 思い出そうとして、鈍い頭痛に襲われる。


 「うっ………たた……なに、ここ…?」


 痛みに耐えながらどうにか記憶を手繰り寄せる。

 私はついさっきまで駅で電車を待っていたはず。

 そして…


 「………そう、だ…私、後ろから押されて…」


 誰かに強く押され、線路に。


 宙に投げ出される感覚、電車が迫る音…思い出してしまったと同時に、恐ろしさが込み上げてきた。

 どうなったのかなんて考えたくもない。


 自分の体を強く抱え込む。

 私は生きている?それともここは……


 「………?」


 ふと違和感を覚えた。

 視界に入ってきたのは、柔らかな薄緑の髪…どうやら自分の髪のようだが、私は黒髪だったはず。

 そして右手を見てみれば、黒く何かの模様のようなものが描かれていた。

 服装は先程までと同じ制服のままなのに、それらだけが異彩を放っている。


 「…なにこれ…私、どうなったの…?」


 動揺しつつもゆっくりと身体を起こす。

 痛みはあるものの動けないほどではないようだ。


 周囲を見てみれば、ここはどこかの森の中のようだ。

 360度どこを見ても、木や生い茂る雑草…

 そして、空中を漂う緑の小さな光だけ。


 「………ゲームの中みたい…」


 あまりにも危機感の無い感想に自分でも首を傾げる。

 けれど、そうとしか言えなかった。

 ゲームやアニメでよく見る、幻想的な森…

 その中の風景が、そのまま目の前に広がっているのだ。


 呆気にとられて呆然と景色を見つめていた、その時。

 ガサガサと葉が揺れる音が聞こえた。


 「なっ、なに…!?何かいる…?」


 急いでその場から立ち上がろうするが、足がもつれて転んでしまう。

 体がうまく動かない…!

 音はこちら側に近づいてくる。

 心臓の鼓動が早くなる。どうしよう、どうすれば───


 どうしようもないまま、がさり、と草が揺れ




 「あら、気がついていたのね。調子はどう?」




 ……草陰から出てきたのは、尻尾の生えたツインテールの女性だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ