鏡像迷宮 32 (了)
ここで了と致します。お読みくださり、まことに有り難うございました。
碧兎抄にてはふたたび、別のエピソードを勘案しております。
物語は済みましたが。…もしも、もしも…、評価に値するとお感じでしたら、是非とも、ポイントのタッチを宜しく御願い致します。
…後日。夕闇。僕の部屋。
「それじゃマンマと悪魔に喰われたのか、狂れたか、葉山」
ひこひこと笑う柳沢は、悟ったふうに続けるのです。
「まあな、若いときはそういうコトもある。これも経験だってこった」
神妙そうにアゴを撫でるしぐさが癪に触りました。
「オマエだって同い年じゃねーか」
「甘美な果実。シンボウ堪らんかったか」
「やめてくれ。本当にドン鬱なんだ」
なんというのか、蛇葬。僕は骨までペロリと平らげられた。
貪欲なウワバミに化け果てたさまは、あれでは安珍清姫。
…くれ泥むアパートの、貧しいウィンドウへと追想した肢体は、ドロドロ螺旋弧を肉色に描く。…貞淑な天使というより、地獄絵の鬼女。…僕はアタマにヒビが入った気分。
かたわら、ノンキな柳沢は、バケモノやUMAの話に興じる。
しかし。
嗚呼。
今日は気分を変え、ジンではなくスコッチを飲る。だけど味はどうでもいい。思考が零度に凍てつき、灼けおちれば良い。
酔いに任せ、本棚より小さな人形を取り出だすと、恵にもグラスを用意して、悪魔の水を相伴させます。
恵に酒を注ぎ話しかける僕は、たしかに狂れているのでしょうか。
それにしても傷の一致。この人形の千切れた脚と、彼女のうつくしい左脚。
…彼女は車で事故を起こしたと言い、僕が恵を拾ったのは無人車のそば。
それにしても停電の日の符合。僕が見たゾウ女と彼女のしぐさ。
…諸々。
狂気だろうか。
それは僕の狂気なのか。彼女のか。
あるいは世界がヒシャげているのか。
僕はケラケラ笑い、酒を呑む。
…その九年後、僕は精神科病院の隔離室に入院したのでありました。
〈了〉




