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鏡像迷宮 28
「ふぅっ」
ひとしきり笑うと、まるで道化師がステージから降りたように。いな。ハッキリこう言うべきか。
女優が演技を終えたように。
スッキリとしてしまった夢野さん。
…役とか人格という言葉の意味を考えなおさせるツキモノの落ちようです。
あろうことか、
「なあんてね」
と宣い、可愛らしく舌をペロッと出したんですよね。
「ビックリした? 葉山クン。あっはっはあ。嘘だよ、嘘。葉山クンさあ、イレズミとか皆んな知ってるって」
「え?」
「いやあ、ロッカーは男の人、皆んな一緒でしょ。いっくら制服がネイビーで透けないからって言っても、下着姿になったら丸分かりだよぉ。ああ可笑しい。私ねえ、ちょっと女優を目指してたこともあるんだよねぇ」
「は?」
目が点です。
「なあんか、キミ、可愛いからさ。カラカイたくなっちゃうのよねぇ、お母さんとしてはさ」
「はあ?」
地球の言葉が分からない。神さま。
「私の子、ムスメだから。息子じゃなくて。女の子だよ。お嫁にどう? 病気もせず元気だからさあ、良い子、産むよォ。あははは、は。あー、可笑しい」




