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鏡像迷宮 22

うむ。休みの日は、こればかり書いていますね。今日もこれを書くのみで終わりました。スリップ(ギョウカイヨウゴです、なんとなく意味は伏せます)するよりは良いのでしょう。

 …そんなはずは無い…、


 そんなはずは無いのです。


 そんなはずは無いのでした。


 …夢野美穂は慟哭しました。不思議なのです。


 外来診察室に入った途端。

 …息子は、建はニヤリと笑いました。


 …そうして縷々纏綿(るるてんめん)、診察医にたいしてフツウのことをフツウに話しだしたのです。


 淀みなく。戸板に水という調子です。まるで当たり前の中学生でした。お母さんがアンマリ大袈裟に心配するので病院に来ました、と含羞(はにか)みさえしたではありませんか。


 ツキモノ…、悪魔憑き、狐憑き、という数世紀もむかしの迷妄が無意味によぎりました。


 それから。演技性人格障害。中枢神経由来の、外因性精神症状。内分泌疾患、随伴症状、人格変化。そのようにも思いました。色々。一瞬のうちに。


 …ほとんど夢想にちかい事すら考えたと言います。健の変貌ぶりは、ミドリを介したウィルス感染の結果であり、まだ我々が知らない、あらたな平行感染症では、などと。例えばそれは狂犬病やCJD(ヤコブ病)のように深甚な影響を与えるのだ…、と。


 しかし(いず)れにしても説明のつく事態ではない。考えるほどに遠心力のかかった思考の軌跡は、かえって核心から遠のいていくホドでした。


 むしろ単純に佯狂(ようきょう)だった、と捉えるのがスッキリするのだろうか、しかし何故。その何故、の先こそが不可解であって、突然、怪物スフィンクスに掛けられた不気味な謎のようなものでした。


 さまざまな思惑が猛速度で頭をめぐるけれど、茫然と場面を見送るしかありませんでした。あたかも変わり玉の息子を前に、敗者の無言を張り付けるしかなかった。


 訳もわからず悔しくて、涙まで滲む。


 困った顔をした診察医が、むしろ美穂にケゲンな目を向けはじめます。…いらだちを覚えた美穂が自身の職業を告白すると、ようやく真顔で耳を傾けはしましたが。


 …初診のその日は、カルテを作るだけのことに終わってしまったそうです。




 …トゥー・ビー・コンティニュー。続きますね。

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