鏡像迷宮 19
ダラダラと続いて申し訳ない気持ちです。もうすぐ完結するハズ。ハズなのですが。
ちなみにフィクション的に再構築して毒を薄めてはいますものの、筆者である僕の身に起きた呪縛をモチーフとしております。
夢野建という少年。おもいはかるに、相当な美少年ではなかったでしょうか。お母さん譲りの美貌を宿していたでしょう、きっと。
…ですから。早熟な上級生の耳目をひいたのかもしれない。
「建がヘンになったのは、女の子と付き合いだしたからかも、と考えてみたの」
…訥々と言葉を連ねる夢野さん。その言葉に抑揚というモノがない。いつもを女神や天使とすれば、鏡を前に石化したメデューサのごとしです。まるで別人格が憑依しているかの印象でしたね…、
「…熱かったのは、女の子のほう」
彼女は。
エキセントリックな、マセた女の子らしい。二つ上の学年の子で、いわゆる不良ムスメとは違うが、若い男性教師に告白してはフラれてみる、というような向こう見ずな子。建君というキラびやかな存在は、そんな子の興味を誘った様子でした。
もちろん最近までランドセルをしょっていた建君は押され気味で、ことわりきれず、彼女に切り出された〈交際〉という御仕着せを試していたに過ぎないのです。
夢野さんはタカをくくっていました。まさか中学生になりたての子にガール・フレンドが出来るなんて驚いたが、時代が違うのだろうと我が身の年齢を嘆息したばかり。消火は必要だけど、単なるナマイキな色恋ザタ。小火でしかない。
無論。
なにぶん、そんな少女だから、早急に手を打つつもりではあれど。だって…、まだまだ恋愛ゴッコの範疇であろうものの、取り返しのつかないことになりかねない。
…その矢先。建君は鏡に縛られだしたのでした。
これだけでも甚だしく面妖です。異様。でも事態は、よりさらに慄然とすべき現象を孕んでいたのでした。
たとえばライフ・イベントの大きさが自我のキャパシティを凌駕してしまい、破瓜型の心の病を惹起するのは良くあること。恋愛は自己破壊と俗にも言われるくらいですし。されど翻って、きちんと対処すれば息子は本来を取り戻すに違いない。そう、夢野さんは自身に言い聞かせた。
けれど、首を傾げるのは、まるでそれこそ鏡写しの出来事のように。
タフなのらしい、少女のほうこそ、果敢ない有りさまと成りはてたコトだったのです。
…一体。摩訶不思議な連鎖を感じられた。
…続きますね。